身近な小さい成功例として、レノボが鎌倉市由比ヶ浜で始めて3年目になる海の家「レノボ・ハウス」があります。マス広告からソーシャル広告に移り変わるタイミングに、消費者とのエンゲージメントを高める場をつくろうという、もともとは主としてマーケティングのために始めた試みでした。
タブレットでのオーダリングに加え、徐々にサプライチェーンやデータ分析のできる体制を整え、今や訪日外国人観光客向けのマーケティング基盤をつくっていく経産省のプロジェクトのローカル実証の一つとして、鎌倉市や地元商店街なども巻き込んで、ひとつの新規事業開発の『共創』プロジェクトになってきています。こうした取り組みは1社では絶対に実現できません。複数の大企業の関係部門や、スタートアップ、個人事業主、行政などがヨコ串でプロジェクトとして成り立っているからできることです。こうした「共創」こそ、自社だけでは発想・実現できない新たな製品・サービスを生み出しますから、さまざまな方面へ広げていきたい。
また、こうしたプロジェクト的な動きは急速に広がっていますから、個人としても、企業という枠にとらわれずそういう場で活躍できる人材をみな目指してもらいたいと思っています。インターネットが進化したお陰で、今まで固定化されていた優秀な人材や資本が再配分され、最適化されやすくなりました。今後は、そういう個としてプロジェクトを創りだしたり、リードしたりして活躍できる人たちが、大企業の社長以上に稼げる時代になっていくはずです。
第4次産業革命で、会社と人の関わり方は確実に変わっていく。弊社で2016年4月からテレワークを推進するようになった背景にも、むしろ会社にとどまらずに外で共創の活動をして新しいものを生み出してほしい、という狙いがあります。
連携のレベルは状況と必要に応じてさまざま
話が少し脱線しましたので、もとに戻しましょう。新しい価値を生み出していくには、横軸での「共創」が重要ですが、その手前で、既に有効でなくなった業界構造、つまり縦軸の境界を変えていくために有効なものが合従連衡(M&A)です。
一言で合従連衡といっても、その・統合のレベルはさまざまです。目的に応じて、統合の度合いを考えなければなりません。
レノボの場合は、IBMのPCとサーバ、ストレージ事業は完全統合しました。一方、NECのPC事業は日本市場に最適化したビジネスなので、一部の統合にとどめています。2011年にスタートして、調達シナジーの獲得や、バックエンドのオペレーション統合、製品ポートフォリオの統合、営業などフロントエンドの統合、人事制度の統合などを順次すすめてきましたが、NECの持っている強みが失われることの無いよう、注意を払っています。
またモトローラの携帯事業も、今のところはまだ限定的な統合です。今後はビジネスの進捗によって、この連携度合いも変えていくことになるでしょう。出自も異なる別の組織同士の連携ですから、カルチャーは完全には一緒になりません。いつかはなるかもしれないけど、すごく時間がかかる。だから、カルチャーの違いはある程度尊重した上で、ビジョンを共有していくことが大事だと思っています。
この後のワークショップでは、そうしたレノボの経緯と現状を踏まえ、当社が次に手がけるべきM&Aを考えてもらいたいと思います。デジタル関連に詳しくないグループは、他の業界で次に起こすべきM&Aを考えてみてください。
: I.レノボの次のM&A(目的、統合レベル、気を付けるべきポイントと対処方法)
II.他業界で次に起こるべきM&A(上同)
さて、この後のワークショップで、上のお題に対してどのようなアイデアが飛び出すのか!?次回ご紹介しますので、ご期待ください。