横行してきた「口頭によるあいまいな契約」

 運賃・料金を巡る課題は大きく2つある。

 1つ目は「運賃と付帯作業料金の分離」だ。運賃とは本来、荷物をA地点からB地点まで運ぶことに対する対価であり、トラック荷台への荷物の積み込みや納品先での荷降しなどの荷役作業は付帯業務として別途料金をもらうべきものである。

 だが、取引における力関係などを背景に、トラック運送事業者は荷役作業を“サービス”として行う慣行が長く続いている。フォークリフトでの作業が可能な場合ならまだしも、運送現場では依然として「手積み・手降し」が多く、ドライバーに過度の負荷を強いるばかりか、女性ドライバーが増えない一因ともなっている。

 こうした現状を変えるために国交省が進めているのが「契約書面化」だ。口頭によるあいまいな契約から書面契約に切り替えることで、明確な業務範囲の設定や料金明確化を進めていくことを目的にしている。これにより、トラック運送事業者の実質的な収入アップを図ろうというものだ。

 2点目が「運賃自体の底上げ」だ。しかし、荷主と運送事業者との運賃契約はあくまで相対が基本であり、行政が関与できる余地はほとんどない。トラック業界ではよく「適正運賃」という言葉が使われるが、“適正”の実態は非常に曖昧だ。運賃のあり方は運ぶ荷物の性質や形状、取引条件、地域性などによって千差万別であり、何をもって“適正”なのかは一概に見定めがたい。

 例えば、ある運送業者がAという荷主からB地点からC地点までの運送を請け負ったとする。C地点まで届けたあとは空のまま戻らなければならない。そこで「空気を運ぶよりはましだ」と近隣のD荷主から通常よりも安く運送を請け負ったとする。その運賃が安かったとして“不適正”だとは言い切れないだろう。

 トラック業界の一部からは目安として「最低運賃」や「標準運賃」の設定を求める声もあがっている。だが、“最低”や“標準”を定めるモノサシ自体が曖昧である以上、この議論は実効性に乏しいと言わざるを得ない。

 また、仮に「標準運賃」を設定した場合、標準以上の運賃を収受している運送事業者への値下げ圧力が高まり、企業努力を損ねることになりかねない。

 運賃問題では、さらに根本的な課題がある。