小池知事が作り出した言葉に
マスコミが踊らされる

 たとえば、同日付の産経新聞では、「豊洲地下空洞初公開 水たまり15センチ 異臭漂う暗闇」と報道しているが、そこには、「地下ピット」という単語すら登場しない。「ズームイン!!サタデー」(日本テレビ)でも『豊洲市場「地下空間」を公開』。週明け19日の「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日)では、《豊洲”盛り土なし”地下空洞公開 すべてに謎の水》。「ひるおび!」(TBS)でも、《豊洲新市場 謎の”地下空間”を公開 一面に広がる水の正体は!?》。

 つまり、日刊工業新聞の報道姿勢がマイノリティなのであって、日経をはじめとする大手マスコミでは、「地下ピット」という都側の説明は聞き流し、「地下空間」、もしくは「地下空洞」と報じるのが「常識」というか、一種の「報道コード」になっているのだ。

 では、なぜこうなってしまったのかということをたどっていくと、ある人物につきあたる。その人物に発言によって、豊洲市場の下に作られたものは「地下ピット」ではなく、「謎の地下空間」であるという、今の流れが生み出されてしまったのだ。

 もうお分かりだろう、小池百合子都知事だ。

 いま、マスコミを賑わす「盛り土」報道の発端は、今月10日におこなった小池知事の「緊急記者会見」にある。そこで小池知事は以下のような「驚愕の事実」をマスコミに明らかにした。

「青果棟、水産棟などにおきまして、実はこの4.5メートルの盛り土が行われていなかったのではないか、そして、それは一体どうなっているのか、といったような疑問が出てきたわけでございます。4.5メートル分抜けているではないかと。結局、空間になっている」

 ここで初めて、「空間」という言葉が使われたのだ。鳥のヒナが生まれた直後に見たオモチャを親だと思い込む「刷り込み」という現象と同じく、記者というのも「初めて明かされた事実」に引きずられる。

「都政の闇」に勇ましく切り込んだ改革派知事が「空間」と断言すれば、それはもう「空間」なのだ。都職員がいくら「いや、あれは地下ピットなんですけど」と訴えても、マスコミの耳には「詭弁」にしか聞こえない。マスコミが、触れ書きや、プレスリリースの「地下ピット」という言葉ををことごとく黙殺したのが、その証である。

 そう聞くと、この筆者は小池知事が「空間」という言葉を用いたことで、この問題をミスリードさせてしまったと批判をしているのではないかと思うかもしれないが、まったく逆で、むしろこれまでの都知事がなし得なかったことが、この人ならばできるかもしれない、と非常に大きな期待を寄せている。