小池都知事、マツダ、アップルに
企業が学ぶべき「3つのポイント」
東京都知事選でまさに地滑り的な勝利を果たした小池百合子氏、市場規模では小さいながら、走る喜びを実現するZoom-Zoomコンセプト、SKYACTIVテクノロジーによる魅力的な内燃機関と国産車のレベルを超えた魂動デザインによる自動車群で成功したマツダ、そして規模の経済性が有効な通信機器市場において、あえてクローズド戦略を取りながら市場に大きな存在感を示したiPhoneのアップル――。
政治家、企業の別を問わず、これらの成功者には、多くの企業が学ぶべき「顧客掌握術」と言える共通点が存在していると筆者は考える。では、その「顧客掌握術」とは何なのか。今回はそれに関して「3つのポイント」から検証してみたい。
【共通点1】
小さな組織でいたずらに範囲を広げず
ぶれない顧客ターゲットを設定している
小池新都知事と同じ保守系有力候補だった増田寛也氏との選挙戦には、大きな違いがあった。たとえば、与党他政党の推薦を受け組織選挙が可能な大規模支援組織を形成した増田氏は、区長会や市長会、その他支持団体向けの組織選挙を行いつつ、浮動票の多い住宅地や繁華街で有権者に直接訴えかける個人向けの選挙活動を総花的に展開した。
それに対して、支持母体となる政党を持たなかった小池氏は、組織票に左右されない個人層にターゲットを絞り、そうした選挙スタイルを誰よりも早く始め、しかも一貫してぶれなかった。
一方自動車メーカーのマツダも、世界の市場シェアは2%程度であり、規模としては決して大きなメーカーではない。だから大手のように、内燃機関(ガソリン車、ディーゼル車)に加えて、ハイブリッド車から電気自動車まで開発したり、海外で現地化した地域別モデルを開発したりするような規模の優位性はない。
そこで、人馬一体、走る歓びを共感できるユーザーにだけ訴えかけることに特化し、CX-5、ロードスター、アクセラなど、インパクトのあるデザインをグローバルの共通モデルとして、コンセプトに共感してもらえるユーザーにだけ提供している。
メインカラーを必ずしも万人受けしない赤にしているのも、マツダの高い塗装技術を示すとともに、かつてのロードスターや若者のクルマの代名詞であった赤いファミリアを想起させ、マツダファンの心にだけ訴えかけたメッセージといっても良いだろう。