豊洲問題を巨大化させることで
小池知事にどんなメリットがあるのか?

 想像してほしい。もし10日の緊急記者会見で、小池知事がマスコミの前でこのような説明をしたらどういう報道になっただろうか。

「通常、建物の下には地下ピットという配管のメンテナンスを行うスペースがあります。当然、青果棟、水産棟などにもございまして、周囲の4.5メートルの盛り土の分、地下ピットとなっていたことが明らかになりました」

 当然、「おいおい、汚染物質は大丈夫なのか」という不安はよぎるが、この前提なら、マスコミは「地下ピット」とは何かという説明から、その役割、そして多くの「地下ピット」では雨水や結露で水たまりができやすいという論調へと流れていく。少なくとも、今のような「謎の地下空洞、その目的や如何に!」みたいな、川口浩探検隊シリーズみたいなノリになっていないことだけは間違いない。

 つまり、小池知事はリスクマネジメント的には「定石」ともいうべき対応をあえてせず、マスコミがどよめき立ち、連日のように追いかけるような「ネタ」を提供したのだ。

 いや、待て待て。知事が意図的に事態をややこしくするようなことを言うわけがないだろ。東京都の失態は、トップの責任だ。不祥事をでかくしたら、自分の首を絞めるだけではないか。

 そんな反論が聞こえてきそうだが、実はこの不祥事を大きくすることで、小池知事には何者にも代えがたいメリットを得ることができる。それは、「なんだかよくわからないが、豊洲新市場にはとんでもないことが起きている」という世論の形成だ。

 小池知事が「築地移転延期」の方針を固めた時、多くの人は「悪手」だと批判した。維持費は1日700万。業者のみなさんも11月の引っ越しに向けて、着々と準備をしている。「改革」にしては都民の流す血が多すぎる。事実、橋下前大阪市長のような自治体運営の達人みたいな人ですら、「こりゃ、まずいな。改革知事をアピールするためだろうが、政治戦略・戦術としては失敗するだろう」(8月30日)という感想をもらした。

 この劣勢をガラッとひっくり返したのが、あの「緊急記者会見」だ。

 小池知事は、「地下ピット」をあえて「空間」という不可解な表現を用いて説明することで、マスコミに対して、「豊洲新市場で我々の想像を超えた異変が起きている」という印象を与えようとしたのではないか。

 そんな馬鹿なと思うかもしれないが、前述したように小池知事の発言に反応したマスコミ報道によって、「不正を徹底追及せよ」という世論ができあがっているのは、紛れもない事実だ。