去る5月に確定拠出年金(以下、DC)の改正法案が国会を通過し、2017年1月から個人型DCの加入対象が公務員や専業主婦にまで拡張され、原則、現役世代全員が加入できる制度になります。2014年に始まった少額投資非課税制度(NISA)では金融庁が中心となって積極的にプロモーションを実施した結果、利用者数が1000万人を超え一定の成功を収めたと見られていますが、厚生労働省はそれに続けとばかりに、現在個人型DCの普及に注力しています。個人型DCは、現時点では「拠出限度額が低い」「制度が複雑」などの問題点が残されていますが、長期的には個人型DCが国民にとっての主要な「自分年金」ツールとなるでしょう。

 ここで大事な点は、個人型DCが普及すれば、現役世代の多くが「自分年金」のために長期で資産運用する時代がくる可能性が高いということです。資産運用というと「富裕層やシニア層が余裕資金をさらに増やすために実施するもの」といったイメージが強いと思いますが、それが大きく変わることになります。当然、運用のゴール設定や投資期間も変わるので、あるべき資産運用の仕方も変わります。

 では、そのような“国民皆運用”ともいえる時代の到来に向けて金融機関は準備ができているのでしょうか? 現時点では富裕層やシニア層の資産運用がビジネスの中心ですので、残念ながら「自分年金」形成というゴールに対する適切なソリューション(運用商品)の開発やアドバイスが十分ではないように思います。

 今回は、そんな環境整備が十分ではない中で、オヤジたちを含む現役世代が、「自分年金」形成というゴールを達成するうえで注意しなければならない点に触れ、実際に現役世代がどのように「自分年金」を形成していくべきなのかについてお話しします。

ベンチマークに対する勝敗は投資家にとって重要なのか?

 今の資産運用ビジネスの習慣では、運用を評価する際の基準としてベンチマークを設定することが一般的なので、経験豊富なオヤジの皆さんの中には、投資信託を購入する際に“ベンチマーク”という言葉を見たことがある人も多いと思います。ベンチマークは本来、自分のゴールを代弁する自分固有のものを設定し、それとの比較で現在の進捗状況を測るために使われるべきものですが、実務においてベンチマークは、市場全体を表すインデックスやその組み合わせを用いることが一般的になっています。例えば日本株式に投資する場合、日経平均株価や東証株価指数(以下、TOPIX)になります。