牧野フライス製作所へのTOB(株式公開買い付け)開始について、記者会見するニデックの荒木隆光専務執行役員牧野フライス製作所へのTOB(株式公開買い付け)開始について、記者会見するニデックの荒木隆光専務執行役員 Photo:JIJI

ニデックの成長をけん引してきたM&Aの立役者が電撃退任――。その陰では、牧野フライス製作所のTOB(株式公開買い付け)撤回との因果関係が囁かれ憶測を呼んでいる。だが、波紋はこれだけにとどまらない。2024年4月に岸田光哉体制が発足して以降、経営幹部の退任が相次いでいるのだ。人材流出の舞台となった事業部門はどこなのか。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

永守氏の「M&Aの懐刀」が退任
牧野フライスTOB撤回の余波か

 8月4日、ニデックの成長戦略の中枢を担ってきた経営幹部の退任が明らかになった。最高M&A(買収、合併)責任者を務める荒木隆光・専務執行役員が8月31日付で退任する。

 荒木氏は三菱UFJ銀行出身で、2016年にニデック入り。創業者の永守重信・グローバルグループ代表のもとで数々の大型買収を指揮してきた。M&Aを成長の原動力にしてきたニデックにおいて、荒木氏は“永守氏の懐刀”と目される存在だった。

 しかし5月、工作機械大手の牧野フライス製作所へのTOB(株式公開買い付け)を撤回。24年末から続いた敵対的色彩の濃い攻防戦は、牧野フライス側の防衛策の発動により決着し、日本では異例とされた「同意なき買収」が実現することはなかった。

 荒木氏は今年4月に最高M&A責任者に就任したばかりで、牧野フライス買収劇において中心的な役割を担ったキーパーソンだ。それだけに、今回の人事は社内外でさまざまな憶測を呼んでいる。

 そしてもう一人――。長年にわたりニデックのM&A戦略を支えてきた幹部の処遇にも、視線が集まっている。次ページでは、その人物の実名を明らかにする。

 しかも、話はそれだけでは終わらない。24年4月に岸田光哉社長体制が発足して以降、経営幹部の退任が相次ぎ主力事業でも「転身」の事実が浮かび上がってきた。その舞台となった事業部門とは、一体どこなのかーー。