キーワードは「働き方改革」と
「所得再分配機能の強化」
配偶者控除の見直しが来年度税制改正の大きな課題となっている。これまでたびたび見直しの必要性が指摘され、2年前に具体案の選択肢が提示されながら、今日まで放置されたこの制度を抜本的に見直すことの意義は大きい。筆者も本欄の第42回、68回、81回などで指摘してきた。
配偶者控除は、配偶者が103万円以下の給与所得である場合、世帯主に38万円の所得控除を与える制度である。例えば妻が103万円以下の給与収入で働く場合、夫は配偶者控除(38万円)の適用が受けられ税負担が軽減される。その上本人も、基礎控除(38万円)と給与所得控除(最低保障65万円)の適用を受け課税されない(103-38-65=0で課税所得はゼロ)。
103万円を超えても141万円までは、世帯所得の逆転現象を防ぐ観点から、配偶者特別控除が導入されている。しかし、多くの企業が103万円を超えると「配偶者手当」の支給を停止するため、厚生労働省国民生活基礎調査で既婚女性の所得分布(図表1)で見るように、103万円前後の所得で就労調整をしている。子育てなどの事情で長時間労働ができないという方も含まれているが、ここまで偏りがみられるのは、配偶者控除という制度が要因である。
◆図表1:既婚女性の所得分布
拡大画像表示
トヨタのように、この壁をなくすべく、配偶者手当を子ども手当へと変更した企業もあるが、多くの企業はそのままである。
いまだこの制度に固執する政治家や法学者がいるが、時代の変遷の中でこの制度の存続意義はなくなっており、廃止を前提に、「代わりにいかなる制度を構築するか」という点に議論をシフトさせる必要がある。