安倍政権のもと「女性が輝く社会」の実現にむけて政府や自民党内部で議論が始まっているが、いままでのところ効果的な政策が打ち出されるという気配はなさそうだ。女子の勤労を促進するというなら、配偶者控除の改組は避けられない。配偶者控除に端を発した「103万円の壁」が、現実に存在しているからである。
今回は、103万円の壁をとっぱらうことを主眼とした所得控除の在り方を考えてみた。その方法は移転的基礎控除を「家族控除(仮称)」として導入することである。
安倍政権の女性活用は
号令ばかりで具体性に欠ける
筆者は、昨年1月17日付の本欄第42回で、「安倍政権が女性の社会進出を支援するなら配偶者控除を廃止すべきではないか」と題して、配偶者控除の問題点を指摘するとともに、これを廃止して子育て支援などに回すことを内容とした提言を行った。
しかしこの1年、安倍政権の女性活用は号令ばかりで具体性のあるものは打ち出されていない。引き続き日本再興戦略の一環として「女性が輝く社会」にむけて政府や自民党内部で議論が行われている。
再興戦略には「男女が共に仕事と子育て等を両立できる環境の整備」として、「働き方の選択に関して中立的な税制・社会保障制度の検討を行う」という記述があるが、配偶者控除を抜本的に見直し、児童の税額控除を設けたり子育て支援制度に衣替えするような動きは見受けられない。
そこで、今回は、「103万円の壁」をなくすという点に的を絞って、「移転的基礎控除―家族控除の創設」を提言してみたい。
女性の就労を阻む
103万円の壁とは
まず、「103万円の壁」とは何かについて説明しよう。図表は、厚生労働省国民生活基礎調査で既婚女性の所得分布を見たものである。これを見ると、既婚女性の所得分布は、どの年代でも見事に100万円付近に集中していることがわかる。