>>(上)より続く

見終わった直後に
もう一度見たくなる映画に

──直近1週間のTwitterで「君の名は」とつぶやいた3万のツイートを分析すると、「2回目、見に行ってくる」というように、「~回目」といったつぶやきが多く見受けられました。他にも、映画の舞台となった場所へ実際に行ってSNSに投稿し、友達に自慢する「聖地巡礼」といった言葉も上位に来ました。映画を見た人が作品に共感し口コミで拡散してさらに観客が増えるという循環がありますね。SNS時代にヒットした作品のようにも感じます。

Photo by Aiko Suzuki

 考えていたのは、往年の映画好きの方々に見てもらって満足してもらうような、形の良さや完成度の高さを目指すよりも、10代、20代の若い観客に向かって、フレッシュに見えるものにしたいということでした。

 10、20代の人が「こんなアニメーションは初めて見た」とか、「こんなに面白い映画を初めて見た」とか、そう響くものにしたいと。結果として、口コミとして広がっていったのかもしれませんが、最初からSNSで拡散させようといったことは一切考えていません。

 ただ、「一度見終わった直後にもう一度見たくなる」、つまり複数回鑑賞してもらえるような作品を目指していました。特に若い子たちに響くためには「過剰なもの」にしようと。詰め込み気味の映画にするということですね。

 一度見ただけで観客が消化しきれない映画を作ることはそこまで難しくはありません。ただし、情報が多すぎて難解となり「映画が分からなかった」では、元も子もありません。一度で「あー、面白かった」と十分に満足してもらえるものに絶対しなければならなかった。その上で、もう一度、主人公の瀧や三葉の声を聞きたいとか、RADWINPSの音楽を聴きたいとか、そう思ってもらえるようにしたつもりです。

 また、若い人に届けるために、映画の鑑賞時間を1分でも短くしようと工夫しました。最初の脚本の段階では合計116分あったのですが、それを大幅に削って、107分にまで縮めました。それも、今の若い人にとって娯楽とは映画だけはないですし、映画館にいる時間は1分でも短い方がいいと感じていたからです。

──映画館にいる時間は短い方がいいと。

 ええ。自分自身が映画を見に行ったときも、2時間を超える作品だと、おっくうだと感じてしまいます。もし、同じ満足が得られるならば、短い方がいいのです。短い時間の中に、ぎゅうぎゅうにこぼれ落ちる寸前ぐらいまでいろいろなものをたっぷり詰め込む。そこで「俺はこれが響いた」「私はこれが響いた」などと、それぞれが感じたものを持って帰れるようにする。そうしたフックをたくさん詰め込んだものにしたのです。

 若い観客の多くは、まだ自分の好みが定まっていません。何が好きなのか分かっていないからこそ、その材料を提供するような作品にしたいと思いました。楽しみ方はそれぞれでいい。音楽に感動してくれた人がバンドを始めたり、背景に感動してくれた人が画を描き始めてくれたり、そんなことにつながると本当に嬉しいですね。その一つに「聖地巡礼」みたいなものがあると思うのです。