ようするに「こいつ遊べそう」と思われていただけだったのだ。

 他人事ならば「それ、遊ばれてるんだよ」と辛辣なジャッジを頭の中で下すことが出来るのだろうが、いざ自分が遊ばれている立場になると、認めたくないものである。

 けれども昨日、街中で見かけたあまりにお似合いな二人を見て、自分の入る隙がないという悲しい現実に心は打ちのめされてしまったのだ。

 自分が身を引いて、由美子先輩を祝福すべきだという気持ちと、心のどこかでは二人がうまくいかなければいいのにとも思ってしまう自分。

 そんな余裕のない、卑しい自分にも嫌悪感を覚える。

 うまく処理できないドロドロした気持ちが胸に渦巻きつづけているのだ。

 今日はなんのやる気も出ないから、授業を聞く気にもなれない。

 そう思って机の中に隠したスマホでTwitterを眺めていると、あるひと言が、目に飛びこんできた。

『祝福できないならば呪うことを学べ ―ニーチェ―』

 呟いているのは、よく見かける「恋を励ます名言集★」というＢＯＴであった。

 共感する人が多いのか、そのひと言は、1000リツイートもされていた。

 ニーチェ？たしか、有名な哲学者かなんかだったような。どんな人かは詳しく覚えていないけれど、倫理の授業でも名前を聞いたことがあるような気がする。