約200人の成功起業家たちに共通していること
今から20年ほど前に、ある大手電機メーカーの技術担当者と、何度か打ち合わせをしたりメールのやり取りをするつき合いがあった。そのメーカーは、当時私が勤めていた会社のサービスを使っていた。
印象的で今でも覚えているのは、ある時、彼が「アメリカでいろいろな企業を視察したが、これからはソフトウェアの時代になると思う」と言ったことだ。
それからしばらくして彼から、会社を辞めてソフトウェアの会社を起業するという連絡をもらった。その時に新しい会社の名前も聞いたのだが、しばらくすると忘れてしまった。ところが、それから2年ほど経った頃、よく耳にするある会社の名前が、そのとき聞いた名前と同じだということに気づき、とても驚いた。
彼が始めた会社は、企業内の情報共有を円滑にするグループウェアを販売していたが、当時は珍しかったインターネットからのダウンロードのみの販売形態を他社に先駆けて採用していた。その後クラウドにも対応し、現在もグーグルやマイクロソフトの類似サービスを抑えて、国内シェアナンバーワンを誇っている。
今でこそ当たり前になったが、スケジュール共有や会議室などの設備予約、掲示板やファイル共有、ワークフロー管理などすべてをウェブに集約することを、20年前にどれだけの人が発想できていただろうか。
さらにそれをかたちにして大きなビジネスに育て上げる過程には、並大抵ではない苦労もあったはずだ。それを乗り切り、新たな製品を世の中に浸透させるには、いったいどのような能力が必要だったのだろうか。
エイミー・ウィルキンソン 著 武田 玲子 訳
日本実業出版社
254p 1700円(税別)
本書の著者、エイミー・ウィルキンソン氏は、戦略アドバイザー、起業家、スタンフォード大学経営大学院講師の肩書きをもつ。また、JPモルガン、マッキンゼー&カンパニー勤務のほか、ホワイトハウスのアドバイザーやハーバード・ケネディスクールのフェローを経験している。起業家のリーダーシップに関する講演活動を積極的に行い、ベンチャー企業や大企業のイノベーションや事業戦略のサポートも行っている人物だ。
本書では、オンラインストレージサービス「ドロップボックス」共同創業者のドリュー・ヒューストン氏、女性用矯正下着メーカー「スパンクス」創業者サラ・ブレイクリー氏、宇宙開発企業「スペースX」や次世代電気自動車メーカー「テスラモーターズ」創業者イーロン・マスク氏など、多くの成長企業の創業者が取り上げられている。
これらの創業者たちは、何でもないアイデアや、漠然とした夢やビジョンを出発点にして起業し、短期間のうちに巨大なビジネスへと成長させることに成功している。
ウィルキンソン氏は5年もの歳月をかけて、これらの創業者たちを含む約200人の起業家たちに長時間インタビューを決行。彼らが成功するまでのプロセスを分析し、共通してもつ6つのスキルを明らかにした。