マッキンゼー・アンド・カンパニーで20年にわたってパートナーを務め、新刊『いい努力』が話題の山梨広一氏と、ボストンコンサルティンググループのシニア・パートナーで前日本代表の御立尚資氏が、生産性の高い「いい努力」について語った対談の後編。毎日の仕事を変革する方法について、鋭い指摘が飛び交います。(構成:山本奈緒子、写真:柳原美咲)
大企業のホワイトカラーは「スピード」に難あり
御立 前編では、自分が属している組織以外の違う世界を持つといい、というお話を少ししましたが、私は、これからは「兼職の時代」じゃないかと思っているんです。
ボストンコンサルティンググループ、シニア・パートナー&マネージング・ディレクター。前同社日本代表。京都大学文学部卒、ハーバード大学経営学修士(MBA)取得。日本航空を経て現職。事業戦略、グループ経営、M&A、経営人材育成などのプロジェクトを手掛ける。経済同友会副代表幹事。国連WFP協会理事。主な著書に『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社)、『経営思考の「補助線」』『変化の時代、変わる力』『ジオエコノミクスの世紀』(共著)(いずれも日本経済新聞出版社)、『ビジネスゲームセオリー』(共著、日本評論社)などがある
「どんなことでも10年やったら一人前」って話があるじゃないですか。囲碁でも将棋でも1万時間費やせば、それなりに身についてくる、という……。サラリーマンも同じで、10年かけて違う世界のことを2つ3つ覚えるといいんじゃないかと。それは趣味でも友だちでもいいんだけど、そういう深くわかっている違う世界がある人が、これからは勝つと思っているんです。
山梨 ええ、すごく大事だと思いますね。
御立 それを実感することになったきっかけは、転職なんです。私はもともとJALに勤めていたんですが、そこからボストンコンサルティンググループに転職したとき驚いたのは、仕事が3倍速になったことでした。課題を設定して仮説を立ててデータを集めて試してみて提案する、というところまですべてが3倍速。
転職する前は、外資にいってもやれるかな、と何となく思っていたんです。で、たしかにやれるんですけど、ただ自分は全然遅い。
その後、さまざまな企業を見て痛感したのは、99.9%の大企業のホワイトカラーはスピードに問題がある、ということです。それはリーダーのせいだったり部下のせいだったり、いろいろあるんですけど、とにかくのんびりしている。
ところが海外に行くと、コンサルティングサイドの人間も速いし、クライアントの人たちも速い。その差につながっているものは何かというと、彼らはとにかく「早く帰りたい」という一心なんですよね。だから、何時までに仕事を終えようと逆算して働く。これが劇的に違うんです。
山梨 私も富士フイルムに11年ぐらい在籍してからマッキンゼーに移ったんですけど、やはり最初に驚いたのはスピード感でしたね。納期の早さがまったく違う。「えっ、これ明日までにやるんですか!?」と。しかも、チームとしてそんな短い期間に仕上げるのですから、これには驚きました。