長期的視点で「友だちを仕込む」という努力
御立 そうですよね。ちょっとこれは、いろいろと良くない噂もある人なのでこれまで声を大にして言えなかったんですけど、島田紳助の『紳竜の研究』というDVDがありまして。これが非常に鋭い視点があって、面白いんですよ。その中で彼が言っている言葉に、こんなものがあるんです。
「流行るっていうのは、自分の強みのX軸と世の中のトレンドのY軸との交点がバチッと合うということ。いまX1、Y1でうまく合っていたとしても、数年すると世の中の軸はY2、Y3と変わっていく。そのとき自分の軸もX2、X3とするために、Y軸がどう変化するか先読みして自分の軸をつくっていかないと一流ではいられない」と。
山梨 なるほど。
御立 ところがこのX2、X3をつくるためのネタというのは、自分のまわりにはあまり落ちてはいないものです。
山梨 そうすると、どこか違う世界のものを持ってきて自分に当てはめる、というカタチでX2、X3をつくっていくことになりますね。必要条件はとにかく「外の世界を持つ」ということですよね。
御立 よく長期思考の経営者というと、20年かかる投資をする人、みたいな誤解がありますが、そうじゃなくて、いまとは違う勝ち方を仕込んでいるかどうか、そこにあると思うんです。
山梨 “仕込んでおく”というのはいい言葉ですね。もう、いまの時代、10年先がどうなっているか確実に捉えることはなかなかできません。だからある程度大きな幅で振れることを想定して仕込みを入れる、それもいくつか異なることを仕込んでおくということが必要になる気がします。
御立 それは個人も同じで、仕事のつながりがあろうがなかろうが、何かの接点があって「この人、面白いな」と思った人は、将来の友だちとして仕込んでおいたほうがいいと思うんです。
私は来年還暦なんですけど、先輩で楽しく生きている人というのは皆、世代を広げて友だちを仕込むっていう努力をしているんですよ。でないと仕事を離れたとき、ふと我に返ると誰もいなくなっている、となる人がけっこう多い。そう考えるとこれからの時代の「いい努力」とは、一番は友だちを仕込むことなのかもしれません。
山梨 しかも世代、分野を超えてつきあうほうがいいです。どうしても仕事関係や同世代だけだと、質が似てしまうんですよね。御立さんがやっていらっしゃる茶道のような趣味の世界だとか、あるいは社会貢献活動などを通じて、まったく違う考え方や経験をしている人たちとどれだけつながっていけるかというのが大事ですね。
御立 それも若いうちからやっておくと、仕事でもプライベートでもいろいろなことがラクになると思うんですよね。
山梨 だからそのためにもぜひ生産性を上げて、仕事以外の時間を作り出すということを意識して実行してほしいですね。