少子高齢化、グローバル化が進行し、経済は低成長下にある日本。社会や経済環境が大きく変わった今、我々日本人は以前と同じような働き方をしていては、成長どころか安定した生活さえもままならない状況に陥っている。では、現代に相応しい「新しい日本人の働き方」とはどのようなものなのだろうか。
当連載は、「リスクをとらないことが最大のリスク」と常に変革の必要性を説くネットイヤーグループCEOの石黒不二代氏をナビゲーターに、様々な切り口から新しい時代における日本人の働き方を探っていく。
初回である今回は、人事コンサルタントの城繁幸氏と共に「終身雇用・年功序列が根強い日本における新しい働き方」を考える。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
十数年前は、終身雇用・年功序列に
「疑問さえ持たなかった」
――日本の大企業で就業経験のあるお二人ですが、実際に働いていた時は日本的雇用慣行である「終身雇用・年功序列」をどのように感じていましたか。
城 「それが普通」だと思っていましたね。初任給から始まって横並びなのが当たり前だと。実際、そうやってどんどん偉くなった人がたくさんいらっしゃいましたから。
ですけど、私は人事部出身なので、色々な計算をするなかで疑問が生まれてきましたね。自分達の賃金を計算してみると、我々の世代の賃金カーブは、団塊世代など上の世代より下にシフトするんじゃないか、みたいな(笑)。
石黒 そんな予感ありました?
城 ありましたね。
石黒 私の場合、女性がとにかく就職できない時代だったので、給与に対して疑問を覚えたことはなかったですね。それに私は性格が大雑把で、お給料の金額を見ないほうなので、とくに気にもしませんでした。ただ、覚えているとすれば、ものすごく少しずつ昇給させていくんだなということです。
「終身雇用」や「年功序列」という言葉も、私がアメリカへ行った後に認識したくらいです。私はちょうど、バブルが崩壊し始めた92年にアメリカのビジネススクールに入学したのですが、その頃は「日本的な終身雇用・年功序列は会社への忠誠心と帰属意識を高めるよい雇用だ」という授業さえあったんですよ。当時、バブルは崩壊し始めていましたけど、皆がそれに気づくまでに時間がかかるじゃないですか。まさか「失われた10年」になるなんて、アメリカでも誰も予想していなかったわけです。
終身雇用・年功序列は「与えられたもの」という側面があり、皆が盲目的に会社に帰属して、何も文句を言わずに働くことが、確かに高度成長期の強みだったと思います。当時は商品ライフサイクルも長かったですから、何か1つのものに向かって邁進するために、すごくよい「正のスパイラル」ができていたと思うんです。でも、今は昔と環境が大きく違い、正のスパイラルが全くなくなっている。それで、ドタバタしているのが今の日本の姿でしょう。