「上司が私を正当に評価してくれない」
「なぜあの人が昇進するのか納得できない」

2000年前後から多くの日本企業が採用をはじめた成果主義。導入に伴い各々の社員が目標設定を行うこととなったが、評価の不透明性や恣意性、短期的な成果に目が向けられたばかりに、冒頭のような不満や意欲の喪失が起きてしまっている職場が少なくないようだ。しかし、終身雇用・年功序列が崩れ始めた今、もはや成果主義の流れを止めることはできない。また、少子高齢化、グローバル化が進むなかで国際競争力をつけるために、個人も効率的に成果を上げられる人材になることは必須だ。

では、日本企業は今、目標設定や評価制度をどう改めるべきなのだろうか。そして、個人はどう働き方を改めるべきなのだろうか。実力主義、成果主義が根付いている外資系企業にその秘訣を学ぶべく、日米両国の企業を熟知し「クラウドコンピューティング」の先端を走るセールスフォース・ドットコム日本法人の宇陀栄次社長と、ネットイヤーグループ石黒不二代社長に話を聞いていこう。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子、撮影/住友一俊)

日米で大きく異なる「働くプロ意識」
スポーツから学ぶべき仕事のポジション

――まず、日本企業と外資系企業における働き方には、どのような違いがあると感じますか。

セールスフォース・ドットコム 代表取締役 宇陀栄次社長

宇陀 私は外資系企業でしか働いたことがないのですが、お付き合いをしている日本企業の方々からは、部門単位でも個人単位でも「あまり明確な目標設定がない」と伺いますね。その点は明らかに外資系と違います。

石黒 私は最初、日本企業に勤めていましたが、当時は目標設定などもちろんなく、キャリアパスや給与を含めた人事制度そのものも全く公開されていませんでしたね。

宇陀 外資系の場合、設定された目標を達成したら成果に対する報酬(コミッション)がもらえますが、これは完全に個人のパフォーマンスに依存しています。スポーツの世界で例えるとわかりやすいかもしれません。

 イチローが200本安打を初めて達成した当時、彼はまだ若い選手でしたが、年俸は年齢に関係なく、実力に伴って上がっていましたよね。そんな世界で活躍できる彼は健康面も含めて自己管理ができており、典型的なプロフェッショナルだと思います。

 でも日本は、“護送船団”と言われた時代もあったほど、団体主義、集団主義的な考え方が根付いていて、能力の高い、低いに関係なく、みんな一律に給与が上下しました。それとは対照的なのが個人主義的なアメリカです。アメリカの企業でよく、「チームワーク」という言葉が使われるのは、“個人”がベースにあるからこそで必要性を感じてのことだろうと思います。