スズキの修会長への気遣いか
会見でのトヨタの章男社長のコメント

 章男社長は会見で静岡西部を指す「遠州」という言葉をたびたび口にした。

「トヨタとスズキは共に遠州(静岡西部)を発祥とする企業で、自動織機を源流としている。また遠州の気質である“やらまいか(とにかくやってみよう)”の精神が根付いている」

 トヨタの始祖、豊田佐吉翁が生まれたのは、スズキの完成車工場がある湖西市。渺茫たる遠州灘が広がる地だ。その意味ではトヨタは確かに遠州の流れをくんでいるといえる。

 しかし、首脳から一般社員に至るまで、トヨタが「トヨタの源流は遠州だ」と言うのを、筆者はこれまで聞いた記憶がない。あくまで三河に本拠を構え、三河と共に生きた企業というのがトヨタの意識なのだ。

 そのトヨタのトップである章男社長が遠州という言葉を連発したのは、いずれグループ内に迎えることになるかもしれないスズキへの気遣いにほかあるまい。

 一方の鈴木会長も、これまでおそらく一度も言ったことがない言葉を口にした。

「良品廉価というやり方はいずれ行き詰まる」

 スズキはこれまで、連綿と軽自動車やコンパクトカーなどの低価格商品を主軸にビジネスを展開してきた。鈴木会長は「大企業は美味しくないビジネスはやりたくない。そこを狙えば、ウチは大企業と競合せずにビジネスができる」と言い切っていた。鈴木会長にとって、良品廉価は自らの経営哲学そのものだったと言っていい。それがダメだというのは、自己否定に近いものがある。

「良品廉価」の戦略に限界?
「ケチりすぎた」と反省した修会長

 スズキは今年の初夏に、燃費審査に使う走行抵抗値の測定を国交省の定めた規則どおりに行っていなかったというスキャンダルに見舞われた。先に問題が発覚した三菱自動車のように、燃費を実力値よりよく見せるためのデータ改ざんをやったわけではないが、不正は不正だ。そんな不正に手を染めた理由は、テストコースが海の近くでデータを取るのが難しかったというものだった。