8代目にしてRJCカー・オブ・ザ・イヤー
を受賞したスズキ「アルト」の快挙

2016年度RJCカー・オブ・ザ・イヤー(国産車)には、スズキの「アルト/アルトラパン」が選ばれた。鈴木修会長の悲願ともいえるアルトの栄冠は、実に8代目にして叶った Photo:ZUMA Press/AFLO

 2016年度RJCカー・オブ・ザ・イヤー(国産車)にスズキの「アルト/アルトラパン」が選ばれた。

 アルトは現モデルで8代目となるが、ガソリン車ナンバーワンの低燃費37.0㎞/L(JC08モード)を実現させたスズキの軽自動車の代表車種である。今回はマツダの「ロードスター」やホンダの「S660」などのライバル車を退けて、2016年次カーオブザイヤーの栄冠に輝いた。

 この受賞を誰よりも喜んでいるのが、鈴木修・スズキ会長だろう。言わずと知れた鈴木修会長は、スズキの自動車事業を日本の軽自動車のリーダーに育て、またグローバルではインドやハンガリーなどでトップシェアを築き上げたワンマン経営者である。

 実に37年にわたってスズキの経営を担ってきた鈴木修会長にとって、最も思い入れが強いクルマがこのアルトなのである。筆者は鈴木会長とは取材を通じて40年来のつき合いだが、アルトはスズキという企業を蘇生させたクルマであり、鈴木修氏というカリスマ経営者を生み出した軽自動車なのだ。

 鈴木修会長にとって、奇しくも今年は齢(よわい)85歳を迎え、6月末に嫡男の鈴木俊宏氏に社長を譲り、その直後に懸案だった独VWとの「離婚」に決着をつけたという、大きなエポックが重なった年だった。そしてここに来て、「アルト」がカー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。まさに鈴木修氏のクルマ人生の大きなメモリアルになったと言っても、過言ではないだろう。

 RJCとは、日本自動車研究者・ジャーナリスト会議(特定非営利活動法人)のことで、毎年カー・オブ・ザ・イヤーを選出し、今回で第25回目となる。今回のアルト/アルトラパンの受賞理由についてRJCは、以下のように述べている。

「新設計による軽量化が最大の特徴。常に軽量化が求められる軽自動車にとって厳しい中での剛性アップとエンジン改良などでミリ単位の挑戦を図ったこと。結果として操縦性や足のバランスも素晴らしい出来、ノーマルでもコーナリングの安定性は想像以上に高い。また、アルトだけでなくスポーティモデルのターボRSや発表されたばかりのアルトワークスやファッション性の高いラパンなどモデルバリエーションも広い。基本性能の高さに加え、選択肢の多彩さも授賞のポイント」