好きなことをコツコツと
続けることがいかに大切か

転職を思い立ったら「子ども時代の特技」に立ち返れ子ども時代に好きなこと、興味を持ったことを長年やり続けたことは何だったのか、振り返ってみては?

 今回は嬉しい報せから話しましょう。ノーベル賞文学賞がボブ・ディラン氏に決まったのも嬉しい驚きでしたが、何と言っても、3年連続で日本人がノーベル賞を受賞したことです。今年は、ノーベル生理学・医学賞に東京工業大学栄誉教授、大隅良典氏が輝きました。

 大隅先生の受賞理由はオートファジー(自食作用)のメカニズムの解明に関するものです。これは、細胞が自身の不要なたんぱく質を分解する現象のことですが、もちろん、本コラムはこの内容を解説しようというものではありません。

 大隅先生は1988年からオートファジーの研究を開始し、93年に関連する遺伝子を解明されました。先生は、それ以前からずっとコツコツと研究をされ続けていた方で、受賞に際したインタビューでも、コツコツ研究することの重要性について説かれていました。奥様やお弟子さんの声を聞いても、本当に一つのことを極めてこられた方なのだと推察できます。

 考えてみると、昨年、同じ賞を受賞した北里大学の大村智特別栄誉教授も同じタイプの研究者でした。微生物が生産する有用な天然有機化合物を45年以上探索研究し、480種を超える新たな化合物を発見されました。

 大村先生の場合は、研究を創薬に活かしたいというゴールイメージを持たれていたようですが、大隅先生にはそうした気持ちはなかったようです。オートファジーという現象を発見してから、とにかくその現象に興味を持ち、「なぜなのか?」を突き詰めてきたのだと言います。

 今回のテーマは、こうした偉大な先達の、奔放な、揺るぎのない、長期にわたる継続的努力はいかにして生まれたのかということです。

 一つのこと、好きなこと、興味を持ったことをコツコツと長年やり続ける、探求し続け、腕を磨くことのできる人生には憧れますが、簡単なことではありません。研究者だけでなく、芸術家や職人、スポーツ選手などに多いキャリアの積み方だと思いますが、そういう人たちの人生は、多くの場合、どこかで経済的に困窮する可能性が高いのも事実です。早くから才能が開花して世に認められ、理想的な活躍の場が与えられたか、支援者が現れないとなかなか実現できないようにも思えます。

 よほどの天才か、運が良いのか、お金持ちの家庭に生まれたのかと思いがちです。研究を続けたくてもなかなか就職口がない困窮したポスドク(ポストドクターの略)研究者にとっては、容易に職が見つかった昔を羨ましく思いたくなるのも無理はないかもしれません。