――現在、カガミクリスタルは、日本の皇室が各国の王室・大統領などの要人をもてなす晩餐会などで使われるクリスタルグラスを納入する唯一の存在であり、また各国にある日本大使館や領事館などにもフルセットでグラスが常備されています。いつから、そのような“特別な立場”になったのですか。

 1943年(昭和18年)に、皇室の「御用品」を拝命して以来、現在に至るまで宮内庁正餐用食器としてご使用いただいています。昭和時代の途中からです。

 よく誤解されるのですが、私たちは「宮内省御用達」という言い方はせずに、「宮内庁御用品」で統一しています。それは、かつて制度として存在した宮内庁御用達は昭和29年に廃止されたのですが、カガミクリスタルは御用品を拝命したとはいえ、御用達の看板(許可)をいただいているわけではないことから、です。例えば、銀製品で知られる老舗の宮本商行さんなどは、明治時代に看板をもらっていることから、今でも宮内庁御用達という標榜が許されています。

 そうした事情があるために、私たちはあくまで宮内庁御用品と言っています。

銅製のグラインダーを駆使して、ガラスの表面に丹念な絵画を削り込む技法をグラヴィールと言う。すべて手作業で、技術の習得には長い年月が必要になる Photo by Shinichi Yokoyama

 宮内庁の場合でも、外務省の場合でも、基本は「欠品補充」(破損などで足りなくなった場合の定期的な追加オーダー)もしくは「特別の発注」(皇室のある方が開く特別な行事などで使う臨時オーダー)となります。毎年の予算の枠内で発注されていますので、一般的なメーカーように「来週までに納入してくれ!」という無茶なオーダーはありません。国としての公式の行事で使われるグラスには、“菊のご紋”の彫刻が入ります。熟練した職人が手作業で行っています。

 結果的に、国内唯一の存在となったのは、2009年に光学技術メーカーのHOYAさんが撤退したからでした。以来、高品質のクリスタルガラスを安定的に供給できるメーカーとなると、カガミクリスタルだけになりました。

 最近の例では、14年に米国のオバマ大統領が来日した際に、安倍晋三首相が弊社の「江戸切子」の冷酒杯をペアで贈られていました。他にもたくさんあるのですが、自分たちで「~の際に使われました」と言えるのは、ごくごく少数の場合に限られます。報道写真には、たいてい写り込んでいるのですが(笑)。