ビジネスパーソンにとっての
リアル二刀流とは

 ビジネスパーソンに二刀流というと、多くの読者は違和感を持つかもしれない。営業は営業、マーケティングはマーケティング、人事は人事…各々の専門性を身につけるべきという考え方が圧倒的に主流だ。

 かくして、専門性を身につける努力に励み、専門分野から他分野へ異動させられようものなら徹底的に抵抗し、ついには退社して、他社で専門分野を極める道を選ぶという事態も生ずる。「専門分野以外の経験は無駄だ」という価値観がはびこっているように思えてならない。

 しかし、専門性の追求は、昇進していくにつれて「専門バカ」と紙一重になる。経営幹部に登用されて、自身の専門分野以外の領域も担うようになると、専門分野以外での経験のなさが露呈し、お飾りにしかならないといった事態が生じるのだ。

 金融機関など大手企業の一部では、総合職と専門職とを区分した人事制度を有している。総合職は数年程度で部門異動し、さまざまな職務分野を経験し経営幹部へ登用されていく一方、専門職は原則として同一の職務分野で経験を積み重ねていく。

 この人事制度は、一見、総合職の経験や視座の広さを実現しているように思えるが、私には専門職による専門業務がなければ成立しない、きわめて脆弱な構造にしか見えない。これでは総合職は、投手と打者との二刀流を経験しているとは言えない。専門職が担う投手をコーチしたり、専門職が担う打者をコーチしたりする程度の機能を提供しているに過ぎないのだ。

 私が申し上げたいビジネスパーソンにおける二刀流とは、自ら業務をハンズオンで遂行する前提での二刀流だ。それも、初めの3年は人事の役割を担い、次の3年はマーケティング職務を遂行するというような時間差をおいて実現するものではなく、同時に人事とマーケティングの両方の職務を担う、いわばリアル二刀流なのだ。実は私は、リアル二刀流を実践してきた。