医薬・医療、エレクトロニクスの新規事業を強化し、収益の軸足を移せるか。“選び抜かれた多角化”を標榜してきた同社の真価が問われる。

「旭化成の強みは、“変身力”のDNAにある」

 藤原孝二・旭化成取締役常務執行役員はこう断言する。「社内には、どれが本流の事業というこだわりはほとんどない。優秀な人材をはじめ必要なリソースを新規事業に投じていく文化がある」。

 確かに、旭化成は時代の要請に応じて主力事業の軸足を「繊維」「ケミカル(石油化学製品や水処理膜など)」……と10~15年おきに替えながら多角化し、売上高1兆6080億円、営業利益1150億円(2010年度予想)の企業体にまで成長した。

 今もまた、価格勝負の新興勢が台頭し大きな市況の変動にさらされている「ケミカル」関連の汎用品を縮小しながら、新薬や医療機器の開発に取り組む「医薬・医療」や、半導体やパネル関連の部品・材料などを含む「エレクトロニクス」といった新規事業を伸ばし、事業構成の転換を図っている真っ最中だ。一方、岡山県倉敷市にある水島コンビナートでは、三菱ケミカルホールディングス(HD)とエチレン製造設備の統合を進めている。

 今年度を最終年度とする06~10年度の中期経営計画では、リーマンショック後の見直しを経て、従来主力だった「ケミカル・繊維」や「住宅・建材」と、「医薬・医療」「エレクトロニクス」の4分野で均等に営業利益を稼ぎ出せる体質づくりを目指している(図(1))。