優れたOJT指導者の指導行動について、4回にわたって解説してきました。実証的な調査分析に基づくセオリーの数々は、職場で実行すればただちに効果があらわれるはずです。では、リーダーが個人として行動を変容させれば、OJT(On the Job Training)全体が再活性化するものでしょうか?実は、上司(もしくは上位者)と若手の垂直的な関係だけではなく、職場全体で若手に「関わる」ことが、成長に大きく作用します。
「お任せジョブ・トレーニング」から
方法的OJTへ
優れたOJT指導者の行動特性を分析し、抽出した38の指導セオリーを9つの観点に分け、前回まで4回にわたって解説してきました。
9つの観点とは、すなわち「目標設定」「計画立案」(Plan)、「計画の実行」「障害への対処」(Do)、「評価」(Check)、「学びの抽出」「次期目標設定」(Action)、「指導方針」(Leadership Policy)、「気をつけるべき指導行動」(Leadership Action)ですが、OJT指導でもPDCAサイクルを回すことによって、若手の成長にプラスに働く、ということです。
このように、若手を成長に導くOJT指導は、現場に「お任せジョブ・トレーニング」ではなく、意識的、方法的に進められるものである、ということは間違いのないところでしょう。
本連載は、「なぜ職場で人が育たないのか」という、いささかネガティブな問いかけでスタートしていますが、言うまでもなく、どのような環境であっても、育つ人は育っている。そして、うまく育てる人は少なからずいる、ということです。
ただし、この20年の職場とマネジメントの変容、情報環境の変化を主因とする対人コミュニケーションの質変化などによって、全体的な状況としてOJTがうまく行かなくなり、その結果として人が職場で育ちにくくなってきた、というのが拙論の前提でした(連載第2回参照)。