甘いと思った飴が苦い
その落差が感動を生む

──今作は、恋愛小説として打ち出さなくてもよかったような気がしましたが、いかがでしょうか。

 それは悩んだところでもあります。恋愛を描いているが、恋愛小説ではない気もしていたからです。ウユニ塩湖の装丁や本のタイトルからは、甘いラブストーリーだと思って読み始める方も多いと思います。それが読み始めたら、「苦い!」「痛い!」みたいな(笑)。

 そうしたコントラストってとても大事だと思うのです。ものすごく甘い飴だと思ってなめたら、ものすごく苦かった。こうした落差も含めてエンターテインメントになるわけです。

 映画『君の名は。』も同じです。男女入れ替わりの恋愛物語だと思って軽い気持ちで見に来たら、驚くような重いテーマの投げ掛けがあるわけです。そういう演出が非常に大事ではないでしょうか。

 僕自身、最後まで変容しないストーリーには感動しないので、「門構えは広く、入ったら地獄が待っている」(笑)。これこそが、物語を記憶にとどめてもらうための最も効果的な描き方だと思っています。

──川村さんの企画・プロデュース関連作品で興行収入ランキングを作ると、1位に新海誠監督の『君の名は。』(194.9億円)、2位に細田守監督の『バケモノの子』(58.5億円)、3位に細田監督の『おおかみこどもの雨と雪』(42.2億円)と、長編アニメ作品が並びます。ご自身ではどう受け止めますか。

 もともと、実写映画とアニメ映画を分け隔てなく見た世代なので、アニメだからどうという区別はありません。そういうものが好きなだけで、アニメと自分の描きたい物語の親和性が高くなってきているだけだと思います。

 ただ、アニメの可能性は強く感じています。宮崎駿監督作品『千と千尋の神隠し』は、コンセプチュアルなアート作品だと思うのですが、それが興行収入308億円と国内歴代1位というわけですから、夢がありますよね。アニメなら実写ほど理路整然としている必要はなく、映像の快楽性で観客の心に訴えかけられる特性もあります。

──4位には実写の『告白』(38.5億円)、5位には『電車男』(37億円)と異色の作品が続きます。

 どちらも、エンターテインメントの中心にあった作品ではありません。片隅にあった歪な作品を、真ん中に置いて届けたことで面白さが生まれたのだと思います。例えて言えば、中身が激辛のハンバーガーをマクドナルドのトップメニューに置いたということでしょうか。真ん中の作品を真ん中に置いても、コントラストは生まれませんから。