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ビッグデータで人事が変わる!Part 2

欧米と日本における
「ピープルアナリティクス」の違い

――産学有識者インタビュー(1) 慶應義塾大学 岩本隆 特任教授

北崎 茂 [PwCコンサルティング合同会社]
【第2回】 2016年12月1日
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海外でピープルアナリティスクスは
1つのビジネスモデルに

北崎 日本企業での動きはまだ途上とのことですが、一方で欧米を中心とした海外の動向はどうでしょうか。大きな動きの違いなどはありますか?

岩本 分析の仕方というより、分析サービスを供給者サイドから違いを見た方がわかりやすいかもしれません。まだ日本では、人事のデータ分析に関する専門業者は限られたほどですが、欧米では、テクノロジーを活用した人事にまつわる分析サービスを提供している会社が、シリコンバレーにあるようなベンチャー企業を含め数多く存在します。特に最近の傾向としては、オペレーションマネジメント、タレントマネジメント、採用(リクルーティング)などの3つにカテゴリにおける専業化が進んできています。

 また笑い話になるかもしれませんが、多くの会社がそれぞれの自社の独自の分析モデルや領域について、「世界で唯一の~」と評しており、これは、こうした人事のデータ分析において、まだ色々な分析モデルが存在しているということを示しているのだと思います。

脳科学との連動など
HRは大きな可能性を秘めている

北崎 一方で、日本や欧米を問わず、従来のアナリティクス(マーケティング等)の領域と比較して、人事領域ならではの分析の難しさという点について、これまでのご経験から感じられることはありますか。

岩本 私の経験に基づいていえば、人事のデータ分析における現状は、どちらかというとトライアンドエラーの繰り返しで、アナリティクスの結果、出てきたモデルはあくまで各企業での個別解にとどまっているのです。

 まだ、人事の領域のデータ分析は、きちんとした「理論化」の段階までには至っていないと感じています。今後、より多くのデータを蓄積・分析していくことができれば、統計学的に言う共通因子が出てくるので、徐々に「理論化」を進めることができるようになると感じていますが、まだその段階にはないと思います。

北崎 人事における統計的な母数の少なさや、各社固有の因子構成(環境の構成)などが、こうした「理論化」の難しさにつながってということでしょうか。

岩本 人事の領域に関しては、色々な分析ケースは見るのですが、以前は重回帰分析など簡単な手法でまかなえてしまうものが中心でしたが、ようやくビッグデータ分析と呼ばれるような段階にシフトしていると感じています。

 また、その先にある姿としては、IoH(Internet of Human)との融合や機械学習(MI:Machine Intelligence)の活用というステージがあり、さらには脳科学の応用なども考えられると思っていますが、こういうステージに至るためには、HRテクノロジーの進化と活用が必要不可欠になると私は考えています。

 あと、面白いのは日本人と欧米人では脳の構造が違う。だから、欧米のものを日本で使ってもダメ。脳科学を使ってHR領域のことをうまく理論化できると面白い。そういった意味では、他の学問に比べて遅れているのかもしれません。

 経営学の中でも特に人材マネジメントについては心理学など他の領域の理論を借りて研究することが多いんです。マーケティングだとデータの定義に対する共通認識がありますが、人事の世界はデータの定義があいまいなことも多くて、その定義から始めないといけません。

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北崎 茂
[PwCコンサルティング合同会社]

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター。慶応義塾大学理工学部卒業。外資系IT会社を経て現職。人事コンサルティング領域に関して15年以上の経験を持つ。組織設計、中期人事戦略策定、人事制度設計から人事システム構築まで、組織/人事領域に関して広範なプロジェクト経験を有する。ピープルアナリティクスの領域においては、国内の第一人者として日系から外資系にいたるまで様々なプロジェクト導入・セミナー講演・寄稿を含め、国内でも有数の実績を誇る。現在は、人事部門構造改革(HR Transformation)、人事情報分析サービス(People Analytics)におけるPwCアジア地域の日本責任者に従事している。HRテクノロジーコンソーシアム(LeBAC)理事。

ビッグデータで人事が変わる!Part 2

「ピープルアナリティクス」という言葉が、人事の新たなキーワードとして大きな注目を集めつつある。これは簡単に言えば人事の領域におけるビックデータ分析を指す言葉である。この概念が企業の「人事の先進性」を指し示す新たな基軸となってきているのだ。

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