東急ハンズ渋谷店に特設された「デコるキット」などを売るコーナー「盛りデコパラダイス」。

 この頃、バレンタインデーにチョコをめっきりもらえなくなった――。そんな「嘆き節」の男性は、筆者も含めて少なくないのではないか。それもそのはず、女性から男性へチョコを贈るのは今や時代遅れ。女性同士でチョコを贈り合う「友チョコ」なるものが、すっかりトレンドとして定着しているからだ。

 チョコメーカー各社の調査を見ると、それは一目瞭然だ。江崎グリコの10~20代の女性への調査では、「今年チョコをあげる予定の相手」はという問いに対して、回答の1位は「女友達」で71.5%にも上った。彼氏(34.3%)、男友達(25.8%)を大きく引き離している。特に中高生では、9割以上が「女友達にあげる」と回答した。

 ロッテの中学生~40代の女性への調査でも、中高生の92.4%が「同性に贈る」と答えている。明治製菓によると、本格的な「友チョコブーム」のスタートは2000年頃だという。最初は本命チョコのおすそ分けとして始まり、それがいつの間にかメインとして習慣化されていったと考えられている。

 また、江崎グリコの調査によると、あげる予定のチョコのトップはズバリ「デコチョコ」(60.8%)。女子中高生の間では、携帯電話や鏡だけでなく、ユニクロの服なども自分なりの装飾でデコレーションして見せ合うのがブームとなっている。バレンタインのチョコも、トッピング材料で「デコる」ことが必須のキーワードになっているのだ。

 そのため小売各社は、バレンタインデーともなれば、「デコるためのコーナー」を拡充している。東急ハンズでは、前年比で売り場を2割増やし、拡大分のほとんどを「デコるコーナー」に充てた。「デコるのは女子中高生だけでなく、OL層にも広がっている。デコる友チョコを追い風に、売り上げも2割増を目指したい」と、同社販売促進スタッフは意気込む。

 さらに、「女性同士」のトレンドに拍車をかけているのが、昨年本格化した女子会ブーム。OLの間でも、バレンタインデーに女子会を開いてチョコを渡し合ったり、ガールズトークを楽しんだりする傾向が強まりそうだ。この流れに乗ろうと、ザ・プリンスパークタワー東京(東京・港区)やホテル大阪ベイタワー(大阪市)では、バレンタインデーに向けた女子会プランを用意する。

 一方、居酒屋チェーンの笑笑は、ロッテと共同で女子会向けメニュー「チョコめし」を開発。チョコを乗せたバゲットにカルボナーラソースを付けたり、じゃがいももちにチョコソースをかけるといったユニークな料理を、食べ放題で提供する。

 もはや男性陣は蚊帳の外……と思いきや、今年は3年ぶりにバレンタインデーが平日(月曜日)になるため、義理チョコ(最近は感謝チョコともいう)ゲットの望みはありそうだ。そんな曜日事情を考慮してか、ロッテの調査によると、女性がバレンタインデーにかける平均金額は前年比16%アップの3266円に。プランタン銀座(東京・中央区)のメールマガジン女性会員(14~65歳)を対象とした調査では、64%が義理チョコを用意し、45%が義理チョコを選ぶのが楽しいと回答している。

 見えてくるのは、「どうせあげなければいけないなら、いっそ楽しんでしまえ」という前向きな女性像だ。同店では、今年は義理チョコ需要も高まると見て、過去最大のショップ数74ブランドを展開し、バレンタインフェアの特設会場も1月21日からと昨年より5日間も前倒しして、2ケタ増の売り上げを見込む。

 この有利な日程を考えても、まだ「どうせ自分はゼロ」と肩を落としている男性には、森永製菓が仕掛ける「逆チョコ」を薦めたい。これは、男性から女性にチョコをあげる行為で、同社は「逆ダース」や「逆小枝」など専用のチョコも販売している。

 これを社内の女性陣に配れば、まさに「逆転打」で好印象となり、来年に望みをつなげられるかもしれない。ちなみに筆者は、早めに帰宅し、妻から恵みを授かろうと思っている。

(大来 俊)