この規制は、自動車販売メーカーに、エコカー(ZEV)の一定以上(2016年は14%)の販売を義務づけている。条件を満たせなかったメーカーは、高額な罰金を払うか、条件を満たしているメーカーの規定値に対する余剰分をクレジットという形で買い取らなければならない。

 この規制のおかげでカリフォルニア州に本社があるEV(Electric Vehicle:電気自動車)メーカーのテスラモーターズは多大な利得をえている。2016年度の第3四半期のZEVクレジット販売額は1億3900万ドルにもなったそうだ。

 この規制では、現在はハイブリッド車もエコカーに含むとされている。したがって、大ヒットしたハイブリット車種「プリウス」を生産・販売するトヨタ自動車は、条件を満たしている。ところが2016年6月に、2018年以降はハイブリッド車を対象外とすることが確定してしまった。

 これまでトヨタは、テスラモーターズと同様にクレジット販売で儲けてきた。しかし、このまま何も対策を打たなければ、2018年以降はエコカーの販売割合が規定値以下になる。すなわち、クレジットを買わされる側にまわることになる。

 トヨタは、1997年「プリウス」投入以来、ハイブリッド技術で世界をリードし「エコカーの盟主」の座を保持してきた。しかし、ルールが一つ変わることで、そのような技術優位性が一転して足かせになりそうだ。

 これにより将来ハイブリッド車の生産量が落ち込み、超巨大企業であるトヨタの収益が悪化することにもなれば、日本経済へのダメージは避けられないだろう。

 ルールメイキング戦略がいかに重要か、ご理解いただけただろうか。

より良い未来を創造する「イノベーターシップ」

 本書でも言及されているのだが、現在の日本のようにモノが余っている環境では、「モノづくり」よりも「コトづくり」による経験価値の共有が競争力の源泉になる。

 プリウスのようなハイブリッド車は「モノ」そのものの価値だけで売れているのではない。その車に乗ることがCO2排出量を減らし、地球環境に優しいといった「コト」の価値で売れていると考えられる。

 ところが、前述のZEV規制のケースは、もはや「モノづくり」や「コトづくり」だけでは競争力を維持できなくなりつつあることを示唆している。