資金繰りに苦しんでいる経営者の力になりたい
──起業してよかったなと思うことは?
僕は自分の人生を後悔したことが一度もないので、起業してよかったとか悪かったというのは、あまり考えたことがありません。
──本書を書いた動機を聞かせてください。
ある方に「斉藤さんはすごい経験をされているので本にしてみたら」と言われたのがきっかけです。僕は直感的に「これ」と思ったらすぐに動くタイプなので、最初から本を書くことについて深く考えたわけではありませんが、僕の経験が誰かの役に立つのではないかという思いはありました。社長仲間で苦しんでいる人が多いことは体験的に知っていたし、おそらく世の中の1、2割の社長さんは、僕自身がそうだったように、苦しいを通り越して資金ショート直前の状況でのたうち回っているのではないでしょうか。僕のところにも、たまに相談に来る方がいます。その苦しさがわかるだけに、そういう人の力には無条件でなりたいと強く思います。
ただ、単なるアドバイスではなく、ここまで緻密なストーリーを書くことになるとは、当初は思っていなかったので、書いているうちに、だんだんこの本を書く意味が見えてきました。
そもそも何十年も前の話なので、細かいことはほとんど忘れていました。そこで資料をひっくり返して年代別に並べて、たしかにそうだったなと思い出したり、登場人物の何人かとは実際に会って話を聞いたり、原稿を何度も読んでもらったりして、ディテールを再現していきました。実際に書いてみると、とくに若い世代、学習院大学の自分の教え子たち、さらに2人の息子たちにも自分の経験を残しておきたいという気持ちが強くなりました。また、母もだいぶ年を取ってきたので、存命中に書き上げたいという思いもありました。