ブラック企業の手口は多岐にわたる。今回は、彼らの主要な10の手口をご紹介しつつ、どこが問題なのか、詳しく解説をする。

 過重労働を強いるブラック企業の手口が、巧妙化しているように思えてならない。

「君ならできる!」――いわゆる「ブラック企業」だけでなく、名の知れた大手企業でも、無責任な人事や上司が社員に過重労働を強いているのが実情だ

 それらの手口は、ブラック企業として挙げられた企業だけでなく、はたまた、中小企業や特定業種の限定された特殊世界だけではなく、誰もがその社名を知るような大手企業でも行われている。

 ブラック企業におけるトンデモ上司やトンデモ人事の巧妙かつ悪質な手口の代表例を紹介したい。

裁量と自主性をはき違えた
無責任パターン

手口1 「時間内にできないのであれば、自己成長のための学習だ」と、「業務命令」ではなく、「自発的学習」であることを認識させ、残業手当を支払わない

手口2 「自発的に休日出勤することに関しては、とやかく言わない」と、休日出勤を暗に促し、あるいは、休日出勤を見て見ぬふりをする。会社が指示した休日出勤ではないので、代休を付与しなかったり、休日出勤手当は支払わなかったりする

手口3 「やり方はまかせるが、明日朝までに作成してくれ。君ならできる。期待しているぞ」と、コミュニケーションの妙手で過重労働を強いる

 これらの手口は、上司の無責任パターンと言えるものだ。残業や休日出勤を命令したという言質をとられないようにして、自発的にさせるように仕向ける。業務命令をしていないので業務ではなく、従って残業手当や休日出勤手当を支払わないというケースだ。そして、これが高じると、手口3のように、上司から部下へのコミュニケーションにより、問題がオブラートにつつまれていく。実は、このケースは、多くの企業でよく見られる。

 しかし、業務命令がなかったとしても、残業したという実態があれば残業手当を支払わなければならないし、休日出勤をすれば、代休を付与したりや休日出勤手当を支払わなければならない。労働基準監督署に問い合わせれば、暗示的命令があったと見なされるケースだ。

 自主性を重んじ、裁量を与えることは、モチベーションを高めパフォーマンスを向上させるために不可欠であるが、それが過重労働を強いることに使われるとは、全くもって本末転倒だ。裁量と自主性の名のもとに、マネジメントを放棄した例と言えよう。