昔の感覚で生きている上司こそ、ソーシャルシフトの意識改革が必要
──ソーシャルシフトの考え方は若い人ほど共感しやすいかもしれませんが、斉藤さんが4回のリブートを経験して徐々にそうした考え方を身につけていったように、上の世代の人たちも、自分たちが変わっていく必要があると感じてもらえるといいですね。
『再起動 リブート』の原稿はいろんな人に読んでもらったのですが、たとえば友人の大手テレビ局幹部は相当衝撃を受けていました。自分は組織にべったりの会社人間じゃないと思っていたけれど、これを読むと、まだまだ組織の常識にとらわれていたんだな、としみじみと語っていたのが印象的です。
──『再起動 リブート』というタイトルについて。
『再起動 リブート』というのはまさに僕の生き方そのもので、僕のことをよく知る人たちは「ひと言でいうと、そうだよね」とすごく納得してくれます。
──再起動といっても、前と同じことを繰り返すわけではないですよね?
OSのバージョンがアップしていった再起動です。ただの電源のON/OFFではありません。
──最後に、働く人に対するメッセージがあれば、お願いします。
ソーシャルシフトの考え方は、もともと若い人たちのほうが共感しやすいものなので、時間をかけて伝えれば、講義を受けている学生たちもだいたいわかってくれるようです。ただ、人にやさしくするとか、人の話をよく聞くとか、生きていくためのテクニックとしてとらえられがちな気がします。もっと本質的なところでわかってほしいというのが僕の願いです。
一番本質的な根っこの部分は、何のために生きているのか、何のために働くのか、ということです。人は幸せを求めて生きています。自分自身のゴールをどこに置くか、どこを目指して生きていくかという根本のところを伝えたい。
僕自身もそうでしたが、若いときは外的なゴールを目指しがちです。お金持ちになりたいとか、勝ち組になりたいとか、リア充になってモテたいとか。しかし、心理学では、外的なゴールを目指す人たちの幸福度は低いということがわかってきています。幸せは自分の外側にあるのではなく、内にあるものです。自分自身の成長や、周囲の人たちとの親密なコミュニケーション、コミュニティへの貢献、そこに自分の居場所があるという安心感。そこに本当の幸せがあるんだということを伝えたいと思います。
その根本さえわかれば、人と接するテクニックとかはほとんど必要なく、自分自身の心に素直に生きていけばいいんです。心の平穏と、心の喜びに素直に生きていく。それを僕は学生に伝えたいので、一連の講義の最終回には必ず「幸せはどこから来るんだろう」というテーマで話をしています。
人当たりのいいノウハウや気の利いたライフハックを身につけて、世の中をうまく渡っていく。ただ、そうしたほうが得だからといった考え方で身につけたものは、いざというときに役に立たないんです。不幸はどこからやってくるかわかりません。突然事故にあったり、突然会社が潰れたり、突然大きな病気になったり、突然親しい人が亡くなったりしたときに、人間は本性が現れます。そういうときでも変わらない自分でいる、そういうときでも幸せな自分でいるためには、根っこの部分から生まれ変わる必要があるのではないか。僕自身は4回の「死」と「再起動」を経て、ようやくそこにたどり着いたんです。
4回目のリブートまで、僕は外部のゴールを求め続けてきました。僕にとっては4回の「死」が必要でした。だからといって、他の人にこうしなければいけないと押しつける気持ちはありません。ただ、僕の失敗の道筋(ストーリー)を読んで、読者のみなさまご自身が内発的に自分の生き方について考えてもらえるとうれしいです。