「コンピュータシステムを開発するSEの仕事でより付加価値を出していくためには、自分でクライアントの課題を発見してそのソリューションを提供するといった仕事経験を積み重ねることが必要となりますが、会社がそうした仕事経験を豊富に用意できるとも限りません。ですが、例えば自分が住んでいる地域の身近な課題を、自分の持っている能力や専門知識で解決するような体験ができれば、地域貢献にもなりますし、自分のスキルを高めることもできるわけです。自分の能力や専門知識を本業以外でも活用する機会を持つことは、結果的に社員の育成にもつながっているんですね」

 1つのスキルだけでは、専門領域として陳腐化するリスクが高い。それにたとえ1つ1つのスキルはさほど高くなくても、それを掛け算したら付加価値が上がる可能性もあるだろう。そういう意味でも外部からの刺激は重要なのである。

社員に業務だけを押しつけず
能力を引き伸ばす工夫を

 そうしたパラレルキャリアを目指すときに最大のネックとなるのは「時間」だ。若い人ほど自己啓発時間が少ないのは統計でも明らかだし、日本の企業には「若いうちは業務経験することが大事」という風潮があって、「勉強している暇があったら仕事をしろ」という感覚がまだまだ根強い。このため、外に出て学びたい、外に出て違う世界に触れたいということを、自動的に制約してしまう傾向が伝統的にある。

 しかし、社員のキャリアづくりへのニーズに対応できなければ、いずれ優秀な人材は採用できなくなるだろう。大手企業を中心に、その人にとって望ましいキャリア開発を支援する「キャリアカウンセリングルーム」などを導入しているのも、その対策の一環だ。労働市場の流動化が進む中、自主的にキャリアづくりができる職場にすることで、優秀な人材を採用したり、優秀な社員をつなぎとめられる可能性が高まる。

 自分らしい選択や生き方、働き方ができるよう、社員一人ひとりのカウンセリングを実施する伊藤忠商事の「キャリアカウンセリング室」などはその一例だ。