イメージほど高額ではない、
がんの医療費
東京都出身。国立国際医療研究センター国府台病院 放射線治療室長。聖マリアンナ医科大学放射線科、埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科を経て、カナダ・トロントのプリンセスマーガレット病院放射線腫瘍科にて、日本人初のクリニカルフェローとなる。並行してトロント大学オンタリオ教育研究所(大学院)医学教育学にて修士号取得。帰国後、国立国際医療研究センター病院を経て、現職。日本医学放射線学会専門医(放射線治療)、がん治療認定医
一般の人がイメージするほど、がんの治療費は高額ではないのですが、感覚的に医療費の不安を感じている人が多いようです。
こうした意識のギャップが生まれるのは、「健康保険の高額療養費制度の存在を知らなかった」「がん治療には健康保険が使えないと思っていた」「入院したら、必ず差額ベッド代がかかると思っていた」など、さまざまな誤解があることが考えられます。
確かにがんの手術や放射線治療を受けたりすると、医療費そのものは数百万円を超えることもあります。
しかし、まずその7~9割(年齢や所得によって異なる)は健康保険が負担しますから、この段階でまず自分の負担分は1~3割になります。さらに健康保険には高額療養費という制度があり(詳しくは本書参照)、収入に応じて各月毎に支払う医療費の上限を超えた分は高額療養費で負担されるので、1回の入院・手術で実際に患者さんが自己負担するお金は最終的には数万〜十数万円程度です。
早期がんなら、術前の検査、術後の定期検診なども含めて50万円程度が、医療費のひとつの目安になりそうです。現在、がんで利用されている治療のほとんどは、通常の病気と同じように健康保険が適用されていますし、入院するときに発生する差額ベッド代は必ずかかるものではありません。
基本的には、「がんになったからと言って誰でも必ず多額のお金がかかるわけではない」のです。
(2)へ続く