今「がん」に関する情報があふれています。芸能人でもがんを公表する人がいるため、ある意味、よく聞く病気になりました。しかし、情報があふれているゆえに、本当に正しい情報はなんなのか……迷う人が多いのも事実です。
そこで、がん患者さんに日々接している現役の国立病院の内野三菜子医師が、がんの主治医に聞きにくいようなことや、知っておいたほうがいいことなどを解説した本『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』を発売。この連載では、その本の中から気になるところを紹介していきます。

がんの治療費の一般的な
「イメージ」は300万円前後

 がん治療はお金がかかるって本当ですか?

「がんになったら、どのくらいお金がかかるんだろう……」

 がんと診断されたとき、病状や治療に対する不安もさることながら、医療費がいくらかかるのかも気になることでしょう。

 実際、2012年2~3月に、国立がん研究センター中央病院(東京・築地)の相談支援センターに寄せられた相談内容には、退院後の療養の場、在宅医療などに続いて、お金に関することや仕事に関することが上位に上がっています。

 がんに限らず、大きな病気をすると、検査や手術などの医療費のほか、入院や通院にともなう交通費などで、健康なときには必要なかったお金がかかるのは確かです。

 しかし、いろいろな病気の治療の中でも特にがんの治療費が不安視されるのは、「がんの治療には多額のお金がかかる」というイメージが先行しているのではないか、という印象があります。また、がんについての「不治の病」というイメージが依然として強いために「(がんと診断されたからには)高価な治療をしないと助からない」と思い込んでいる患者さんもいるようです。

 民間の保険会社が、「がん治療全般(入院、食事、交通費等を含む)どのくらいのお金がかかると思うか」という調査をしたところ、がんの治療経験のない人は、「300万円より多い」と答えた人がいちばん多くて32.1%。ついで、「300万円程度」が21.1%で、「200万円程度」が21.0%と回答。7割以上の人が、がんの治療には200万~300万円以上かかると思っていました。

 ところが、実際にがん治療の経験のある人に実際にがん治療全般に関わる費用はいくらでしたか?という質問をしたところ「50万円程度」と答えた人がいちばん多くて36.3%。7割弱(65.8%)の人が、実際に使ったお金は100万円以内という結果になりました。