この連載ではマネジャー層、もしくは育成に関わる上位者層を対象として「若手が育つための方法」を提示しようとしてきましたが、実のところ、マネジャーだけに孤軍奮闘を求めるつもりはありません。というより、本当に若手が職場で育つようになるためには、経営者が育成に対する明確な方針を持っていなければならない、と思います。
上記の<3>は、非常に大切なポイントだと思いますが、現実には、どうでしょう。
経営者の努力について、この連載で何かを指摘するのは無理があるので、深入りはしません。個人的な夢想としては、現場主導で赫々たる成果をあげて、経営者の蒙をひらくようなケースが出てきて欲しいと思っているのですが。
周囲が「内省」を支援することで
経験学習サイクルは駆動する
若手が能力を向上させるためにもっとも必要なのは、若手自身の自助努力でしょう。上位者、先輩は、それを見守り、サポートするというのが、もっとも望ましいあり方だと思います。
自助努力ということの内実は、さまざまなケースがありうるでしょう。
言うまでもなく、基本は日々の業務です。いわゆるOJTです。それにプラスアルファの学習活動として、会社の用意する研修やeラーニングなどの教材への取り組みもあるでしょう。さらに向上心の旺盛な新人ならば、自分で本を読んだり、社内外の勉強会に出席するといった努力をするでしょう。
ここで、2つの指摘をしたいと思います。ひとつは、日々の業務をうまく学習に結びつけ、成長につなげていくための「経験学習」の概念について。もうひとつは、自助努力の足りないタイプ、学習意欲の低い新人への相対し方です。
まず、「経験学習」について。日々の業務を通して若手は仕事の能力を向上させていきますが、だんだんと担当業務量が増え、戦力としてカウントされるようになると、業務を振り返る余裕をなくしがちになります。先輩ないしベテランである私たちの業務のありようにも似た繰り返しになっていきます。