注目度が高い箱根駅伝に憧れる少年は多く、競技者を増やすことには貢献している。だが、その一方で長距離ランナーとして大成を阻む弊害もあるといわれる。たとえば箱根駅伝を走ることが最大の目標となり、それを達成すると燃え尽きてしまい、次の目標が見いだせないというもの。また、チームのために頑張るという意識から限界を超える走りをしてしまい、故障を抱えるという説もある。駅伝のスケジュールが優先となり、マラソンへのチャレンジが難しい。駅伝とマラソンではレース中の駆け引きも異なり、そうした経験のなさが後々の競技人生にも影響するという専門家もいる。加えて箱根駅伝を走った選手と、それを経験せず独自にマラソンランナーの道を歩んだ選手では、競技に対する姿勢に微妙な差があるような気がする。

 筆者はマラソンで実績をあげた選手の取材をしたことが何度かある。長距離ランナーは総じて性格が穏やかで話しやすいが、その中にも、ちょっと変わっているというか、独自の世界観を持っている人が多かった。大学駅伝はチームで戦うものであり、協調性が優先される。そんな環境で過ごすことで、そうした個性が失われるのではないだろうか。

 青山学院大の原監督は、箱根駅伝を3連覇した実績を背景に学生陸上界だけでなく、日本の長距離・マラソンにも改革の提言をしている。学生のうちにマラソンにチャレンジさせるというのもその実践のひとつだし、個性を尊重する指導もしているようだ。

 東京五輪でのメダル獲得はともかく、そうした革新的な試みを続け、マラソン界に記録更新へのチャレンジが積極的に行われるような風を呼び込んでもらいたいものである。