また、よく報道されているように、クリントン氏の方が300万票近く多くの得票を集めた。歴史が振り子のように左右に揺れながら動いていくことを考え合わせると、今回のトランプ氏の勝利は必然というよりは偶然の要素の方が強いと見ることもできるのではないか。いずれにせよ、戦後世界の曲がり角になるのかどうか、もう少し長い目でトランプ政権の行方を見守るべきであろう。

日本ファースト政策は採れない

 トランプ氏は大統領選挙戦ではアメリカファーストを主張していた。中国の習近平主席の政策も中国ファーストであり、ロシアのプーチン大統領の政策もロシアファーストであるように見える。ならば、わが国も日本ファーストで行くべきではないか、という連想が生まれることはごく自然な流れだろう。

 しかし、わが国が本当に日本ファースト政策を採れるのだろうか。アメリカや中国、ロシアはいずれも超大国であって、人口も国土も天然資源も半端ではない。これに対してわが国は、近代の産業革命の3要素と言われる「化石燃料」「鉄鉱石」「ゴム」のいずれも産出しない。それでいて20世紀の後半にアメリカに次ぐGDP世界第二位の経済大国にまで昇りつめたのは、グローバリゼーションのおかげであった。つまり、わが国ほど自由な交易の恩恵を受けている先進国は他にはあまりないのである。

 翻ってわが国の近代史を眺めれば、明治維新(第一立憲政)の成功は、「開国・富国・強兵」という徳川幕府の少壮官僚が立案したグランドデザインに拠るところが大きかった。第一次世界大戦後、日本ファースト政策を振りかざし、「開国」を捨てて世界の孤児となっていった帰結が第二次世界大戦における未曾有の敗戦であった。

 戦後の日本は(第二立憲政)、「強兵」を捨てて「開国・富国」というグランドデザインで国土の再建を始めた。それが奇跡の高度成長につながったのである。安倍首相は昨年の12月に真珠湾を訪れ、「寛容の心、和解の力」が日本の復興を助けたという演説を行った。引き続き、国を開き、寛容の心で世界と協調していくことこそが日本の生きる道であり、繁栄の道であることは明らかであると考えるが、どうか。

(文中、意見に係る部分は、筆者の個人的見解である)