日銀の国債購入に全くリスクはないのか?嘉悦大学の高橋洋一教授と日銀の当座預金の債務性などについて議論を交わしてきた田中秀明・明大教授が、いま一度疑問を呈する

 筆者は昨年11月より、ダイヤモンド・オンラインの記事を通じて、嘉悦大学の高橋洋一教授と日本銀行の当座預金の債務性などについての議論を行っている。初めてこの記事を読む読者のために経緯を説明しておくと、発端は筆者が寄稿した記事「『日本は借金が巨額でも資産があるから大丈夫』という虚構」だった。

 それを受けて高橋教授から、「日銀当座預金を民間銀行の『預金』と勘違いする人々へ」という反論をいただいた。

 その後、そこで述べられた内容に疑問を感じた筆者は改めて「埋蔵金と日銀の国債購入で日本の借金は消えるのか?高橋洋一教授に反論!」という記事を寄稿。高橋教授からはさらに「日銀当座預金に債務性はあるはずがない。田中秀明教授に再反論」という意見をいただいた次第だ。

 日本が抱える債務問題などを明らかにするためにこうした議論は歓迎するが、残念なことは、高橋教授が前述の再反論記事において、「財政事情ガー」などという揶揄をしつつ、筆者が投げかけた質問に対する回答や指摘に対する反論がほとんどなかったことである。筆者が再三指摘しているのは、「埋蔵金を活用すれば、また政府と日銀のバランスシートを統合すれば、問題は解決する、財政再建の必要などない」という、高橋教授の主張である。

 同教授の指摘には傾聴に値するものもあるが、専門家や研究者が、そのような楽観論を一般国民に振り撒くのは無責任だと筆者は考えおり、だから筆者は繰り返し反論している。同教授も、以前は歳出改革の重要性を訴えていたと記憶するが、そのような見識はどこにいったのか、残念でならない。

高橋教授に改めて
問いかけたい「9つの疑問」

 これまでの拙稿から、筆者が高橋教授に投げかけた質問や指摘を、改めて整理しよう。高橋教授には、まずは次の問いにに対して回答をいただきたい。

 1.高橋教授は、財政状況は資産負債差額で評価すべきと言っているが、埋蔵金(特別会計の積立金等の資産)を取り崩しても(フローの歳出を賄う)、財政状況は悪化しないのか。

 2.高橋教授は、当初、埋蔵金で債務を削減するべきと主張していた。最近は、埋蔵金を減税や給付金などの景気対策に使うべきと主張しているが、考え方が変わったのか。もしそうであれば、その理由は何か。