人生の幸福度は、いかに周囲の人と良好な人間関係を築けているかに大きく左右される。よい出会いやめぐり合わせを引き寄せ、良好な人間関係を維持していくための必須条件とは何か?
相手の「ため」ではなく、
相手の「立場」で考える
人間はどこかに支配欲や占有欲があり、それはいつでもひょっこりと顔を出します。
家族や他人を「自分の思い通りにしたい」という欲望もなかなか消えません。
結論から申し上げると、他人は100パーセント思い通りにはなりません。どんな状況になっても、たとえ血のつながった家族であろうと、思い通りにはできません。
あなたが支配される側の立場となったとして、想像してください。
誰かに支配的、占有的に振る舞われたら、どんな気持ちになりますか?
逆らうと立場が悪くなるとわかれば、形だけ従うような「ふり」をするでしょう。でも、心の中では従っていません。誰だって支配も占有もされたくありません。なぜならそれは、「個」としての学びを放棄することになるからです。
東京大学名誉教授。医師。1981年、金沢大学医学部卒業。1982年、富山医科薬科大学の助手となり、83年、国立循環器病センターのレジデントとなる。同センターの外科系集中治療科医師、医長を経て、99年より東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻および工学部精密機械工学科教授。2001年より東京大学大学院医学系研究科救急医学分野教授および医学部附属病院救急部・集中治療部部長となり、2016年3月に任期満了退官。
「個」としての学びの放棄は、私たちがこの世に生まれてきた事実自体を放棄するということです。
物品、宗教、思想、生活スタイル……など、あなたに何かを押しつける人は、よくない心の状態です。その人自身が何かに執着し、囚われの身となっています。
組織でも上位に立った途端に支配欲の強まる人がいます。単に面従腹背の人々を従えた気になっているだけで、そんなチームでは戦えません。
では、支配欲、占有欲を手放すと、どうなるでしょうか?
おそらくほとんどの状況で、自分と周囲との関係が劇的に変わります。あなたの周囲を支配していた憎しみや怒りが消え、代わりに信頼や共感が生まれてくるのです。
相手の「ため」ではなく、相手の「立場」で考えて行動すると、信用度が増します。
支配欲、占有欲を手放すと、相手だけでなく自分も快適になるのではないでしょうか。「こうしなければならない」という束縛感から解放されるからです。そこで初めてお互いの顔に、心からの笑顔が出ます。
サン=テグジュペリ(作家)の言葉を引用しておきます。
「人は微笑みで報われる、人は微笑みで生かされる」