家庭や職場、学校、あるいは趣味の集まりなど、他人と関わり、交流すれば必ずついてくるのが人間関係の悩みだ。しかし、そんな人間関係も、こうして考え方を少し変えるだけで驚くほど楽になる。

人付き合いが減ると、楽になる

 悩みの種だった人付き合いが、気がつくと楽になっていることがあります。
 経験のある方もいるでしょうが、これほどうれしいことはありません。なぜ、楽になるのでしょうか?

(1)付き合う人の数(顔ぶれ)が減ると、物理的に楽になる
(2)気が合う人との交流が増えると、精神的に楽になる
(3)相手に何かを求めなくなると、関係的に楽になる

 これらは、いわゆる「お互いさま」を理解した境地なのです。少しずつこれができるようになれば、日常が変わります。

 付き合う顔ぶれが減ることで、大事に思い合える人だけが残ります。
 無理に減らす必要はありませんが、何かをきっかけにして減ってしまうこともあります。あるいは時間的、物理的(距離的)な要因でも、付き合う人は減ります。

矢作直樹(やはぎなおき)
東京大学名誉教授。医師。1981年、金沢大学医学部卒業。1982年、富山医科薬科大学の助手となり、83年、国立循環器病センターのレジデントとなる。同センターの外科系集中治療科医師、医長を経て、99年より東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻および工学部精密機械工学科教授。2001年より東京大学大学院医学系研究科救急医学分野教授および医学部附属病院救急部・集中治療部部長となり、2016年3月に任期満了退官。

 そもそも、友人は作るものではなく、「できるもの」です。さまざまな条件が重なった末にできるものであり、自然の成り行きなのです。
 ですから減るのも自然な成り行きであり、自然減はむしろストレスを解放してくれます。

 友人といっても、関係は不変なものではありません。
 お互いを取り巻く環境の変化などで、それまでの友人であり得た条件が変わり、疎遠になることもまた自然なのです。
 気が合う人との交流を密にすると、共有力が高まります。
 何かを共有したり、分け合ったりすることは、気づきと学びです。
 そして、他者に求めなくなると、自分にも求められなくなります。また、そこに何か加えるとすれば、「誰かを追いかけない」ということでしょうか。
 意識が変わり始めると、必ず付き合いの中身が変わります。それを繰り返すと、次第に自分と近しい人に出会うことになります。すると、誰かを追いかける必要もなくなり、理想的な付き合いができるようになると思います。