「コントロールできる内部環境」の中にも、いろいろな要因があります。ポイントは「1つずつ変えていくこと」です。まずはパジャマを変えてみて、ぐっすり寝られたかどうか確認する。次に枕を変えてみる。その次に室温を変えてみる……。多くの人は、いきなりすべてを変えようとするので、何が眠れない原因で、どの対策に効果があったのかが分からなくなってしまうのです。

 さて、そうした前提を踏まえたうえで、冬の代表的な「コントロールできる内部環境」について、対策を考えてみましょう。

風呂から上がった「30分後」に
リビングのエアコンを消す

 冬は外気温が寒いですから、体温の調整が難しくなります。そこで、睡眠前の体温調節法として、まずは心地よく眠気を誘うお風呂の入り方を知っておきましょう。ポイントは、「浴室の中とリビングの気温差を少なくすること」です。急な温度変化があると、体は刺激を感じて覚醒しやすくなったり、血圧の急上昇・急降下につながります。

 まず、バスタブのお湯は、必要以上に熱くする必要はありません。体が温かいと感じればOK。39度~40度で充分でしょう。お風呂から出て、リビングでくつろぐ方も多いと思います。そのために、お風呂から出たときのリビングの温度をコントロールするのです。エアコンを20度台前半くらいの寒いと感じない温度でつけっ放しにしておいて、お風呂を出た30分後くらいに切るのがよいでしょう。というのは、入浴によって上がった体温は、30分後くらいから下がり始めるからです。お風呂から出て、30分ほどくつろいでから寝室に行くイメージです。人は緩やかな体温の低下とともに眠たくなっていきますから、体温低下の波と室温の差が広がりすぎないようにすることが、心地よい眠りを得るための秘訣なのです。

風呂に入る前にリビングを暖めておく

寝室の暖房器具は
「オイルヒーター」がベターな理由

 そして、リビングから移動する寝室の環境も重要です。寝室内があまりに寒いと、睡眠を妨げます。私は仕事で東北の寒冷地にある病院寮に住んでいたことがあるのですが、そこは窓が広すぎて、暖房を入れても部屋がしっかり温まらなかったため、寒さで毎晩何度も目を覚ましていました。

 さらに、冬は気温が低くなるだけでなく、空気が乾燥もしますから、夏に比べて睡眠中に喉が乾燥しやすく、ウイルスが吸着して風邪をひきやすくなります。また室内は乾燥していても、布団の中は湿度が高くなるため、意外に汗もかいています。

 そこで私は、オイルヒーターをおすすめします。湯たんぽや電気マットを使っている方も多いかと思いますが、寝ているときは熱さを感じにくいために、布団の中で局所を温めすぎると低温ヤケドを起こしやすくなります。ですから、湿度をあまり変化させず部屋の空気全体を暖めるオイルヒーターがベターなのです。

 寝具やパジャマは、吸水性が高くて湿度がこもらないものがよいでしょう。となると綿素材のものがおすすめですが、綿は肌触りが冷たく感じる人も多いため、自分が心地良いと感じるものを選んでください。

「今以上にストレスをかけないこと」が
良質な睡眠につながる

 このように「コントロールできる内部環境」を1つずつ潰していって、それでも睡眠が改善しない場合に初めて、「(2)コントロールできる外部環境」や「(3)コントロールできない内部環境」の改善に移行していきます。

 多くの人にありがちなのが、いきなり「(3)コントロールできない内部環境」から着手しようとするケースです。仕事や上司のストレス、女性のホルモン周期といった「コントロールできない内部環境」に関しては、睡眠環境をどうこうすることよりも、「今以上にストレスをかけないこと」がポイントです。

ストレスが高いな、と思った時には新しいワークスタイルを取り入れない、重大な決断をしないことが大切です。他人が関わる要因は、改善することそのものに大きな負担がかかります。ストレスが上乗せされるような状況をできるだけ避けて、「嵐が過ぎ去るのを待つ」「できるだけ考えないようにする」という姿勢も選択肢に入れておいてください。それだけでも、かなり気持ちがラクになり、眠りやすくなるはずです。