『一流の睡眠』では、忙しいビジネスパーソンが仕事のパフォーマンスを落とさないための眠り方について、32の具体策を紹介しています。本稿では、本の中では触れられなかった「寒く乾燥しやすい冬に、どう快適に眠るか?」という話をしたいと思います。(構成:山本奈緒子 聞き手:今野良介)
冬の睡眠不足が
夏より危険な理由
冬の睡眠不足は、夏以上に体へのダメージが大きくなります。湿度が下がって乾燥すると、空気中のウイルスが活動しやすくなります。さらに、空気が乾燥すると、喉の粘膜が乾燥して炎症をおこしやすくなり、ウイルスを防御する力が衰えてきます。ただでさえ体調を崩しやすい環境下に、睡眠不足で免疫力が低下すると、なおさら風邪やインフルエンザにかかりやすくなるのです。
さらには、寒い時期は美味しいものが増えますから、食べ過ぎてしまい、太りやすくなります。夜更かしや睡眠の乱れは、食欲に関連するホルモンのバランスを乱し、体重増加に拍車をかけます。正月明けに体調を崩して体重も増加してしまった、という人も少なくないでしょう。また、睡眠不足は、血圧を不安定にする可能性があります。さらに、冬は外気と建物内の気温の変化が激しいために血圧が変動しやすいですから、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高まります。冬の睡眠不足は危険の宝庫なのです。
最近、「お風呂は何度で入るとよく眠れますか?」とか「寝室のエアコンは切ったほうがいいですか?」といった冬の睡眠環境についての質問を受けることが少なくありません。しかし、そのたびに私は答えに窮してしまいます。睡眠環境とは、寝具、パジャマ、お風呂の入り方、布団のかけ方など、多くの要素が複雑に入り混じっているからです。どんなに高機能なマットレスを買っても、隣で寝ている人のイビキがうるさかったら、熟睡することはできないでしょう。
つまり、睡眠環境を作る無数の要素の中から、まず「どこから改善するのか?」を決めて、その結果を1つひとつ検証しないと、「何が原因で眠れないのか?」が判然とせず、結果として睡眠が改善されないということになりやすいのです。
「睡眠環境マトリクス」の
左上から対処していく
そこで、是非やっていただきたいのが、「睡眠環境のマトリクス」を作ることです。縦軸と横軸を書き、横軸の左右を「内部環境」と「外部環境」、縦軸の上下を「コントロールできる」と「コントロールできない」として4象限に分割し、4つの枠に、1つひとつの要素を当てはめていくのです。
左上の「(1)コントロールできる内部環境」には、パジャマや寝具、お風呂の入り方など、自分次第でいくらでも工夫できる事柄が当てはまります。右上の「(2)コントロールできる外部環境」は、隣で寝る人のイビキや、お子さんの夜泣きなど、自分以外の人の問題だけれども、寝室を別にするなどの対策が取れる事柄が当てはまります。
一方、左下の「(3)コントロールできない内部環境」は、性格が合わない上司へのストレスや明日のプレゼンに向けた不安などの仕事上の悩み、すでに罹患してしまった風邪、女性のホルモン周期による不眠など、自分自身のことながら簡単には調整できない事柄が当てはまります。そして右下の「(4)コントロールできない外部環境」とは、たとえば家が国道沿いにあって騒音がすごいなど、ほとんどどうしようもないような事柄が当てはまります。
このように4分割すると、(1)から(4)に進むに連れて、コントロールが難しくなってくることがわかります。だからこそ、まずは自分の工夫次第で改善できる、左上の「コントロールできる内部環境」から着手すべきなのです。ただし、「睡眠の妨げになっていると感じやすい順番」は、(4)から(1)と逆であるという点に注意が必要です。
たとえば(4)の代表例「近所の騒音」に対処するには引っ越すしかありませんし、(3)の仕事のストレスは、自分だけではどうしようもありません。(2)のパートナーのイビキに対処するために別の部屋で眠ろうとしても、それを相手に伝えるとなれば、人間関係上のストレスが生まれるでしょう。だからこそ、まずは(1)の「コントロールできる内部環境」から手をつけるのが最も効率的なのです。