中国──政治の季節における二大リスク

 2017年秋には共産党第19期党大会が開催され、今後5年の指導部の人事が決まることになる。68歳を超えて常務委員を続けられないという共産党の内規に従えば、7名の政治局常務委員中、習近平総書記・国家主席、李克強首相を除く5名が交替する。強固な習近平体制を構築してきたのは高い経済成長率、体制を引き締める反腐敗闘争、国内の批判を封じる強権的措置の組み合わせであった。

 このような体制が揺らぐとすれば、経済成長率の大幅な下落に起因しよう。習近平総書記は「中国の夢」を語り、中国人が豊かになること、当面、2020年に2010年比所得倍増を目標に掲げた。この夢を実現させるためには今後最低平均6.5%程度の成長を達成する必要がある。現在の中国には過剰生産設備、不動産バブル、不良債権、環境劣化、非効率な国有企業、地方との格差など多様な問題が山積しており、従来の高い経済成長は維持できるとは考えられない。

 成長率が下降していった時、PM2.5等の環境劣化に苦しむ都市住民や都会戸籍を持たない地方労働者の不満はこの上なく高まろう。所得不均衡の是正など経済の質の充実にソフトランディングしていくことが望ましいが、国内求心力の維持のために対外的に強硬路線を走る可能性が排除されない。

 第2のリスクは対米関係である。中国は「一帯一路」構想の下、アジア・インフラ投資銀行等を通じ対外的な投資を活発化し、国際社会における影響力を拡大してきた。同時に攻撃的な海洋政策はASEAN諸国や日米などに大きな懸念を抱かせてきた。果たしてトランプ政権が対中強硬策をとるのか、あるいは中国とのトータルな合意(グランドバーゲンと言われるような政治安保経済面における大きな合意)を求めていくこととなるのかは不透明である。

 最近の議会の指名承認公聴会においては閣僚候補者の中国に対する強硬な発言が目立つ一方、トランプ氏は「一つの中国」政策も交渉対象と発言するなど中国との大きな取引を考えている気配もある。中国は自身が政治の季節を迎えることもあり、当面は海洋政策、貿易政策、投資政策、通貨政策等において強い立場を示していくのだろう。ただ中国の最大のプライオリティは経済にあり、米国との対決は経済成長にプラスとは考えないであろうし、この1年米中関係はリスク含みで推移していくのだろう。