坪井恵子さん
2009年5月、困窮者のための無料高認(旧大検)塾を設立。 中卒(高校中退)ユースの貧困と孤立を防ぎ解消するために多様な支援の必要性を感じ、2010年8月、一般社団法人ストリート・プロジェクトを設立、理事長に。 2014年4月「食べる・働く・学ぶ・泊まる」を“無料”で手助けする実家みたいでホッとできる居場所『ごちハウス』をオープン。生活苦の高校生の支援も開始。2011年より思春期相談関連懇話会委員(福岡市児童相談所に設置)。2013年9月から保護司。2014年福岡市養育里親認定(未措置)

 2000年代当時、16歳以上で高校に在学していない若者に対する公的支援は、ほぼ皆無といってよい状況だった。未成年ではあるが、すでに義務教育の年齢ではなく、就労も可能だ。しかし成人に達していないため、1人ではアパートの賃貸契約を結ぶこともできない。児童福祉の対象となる子どもと、成人として行動できる大人の「谷間」に落ちたまま、若者たちは、あがき続けることになる。

 成人まで親のもとで過ごすことができれば、時間の経過が年齢の問題を解決するだろう。問題は、その選択肢がもともと存在しない、あるいは事実上存在しない場合だ。2000年代当時、16歳を過ぎて児童養護施設に居住するためには、高校に在学している必要があった。高校を中退すると、住まいを含め、高校に在学していることを理由として提供されていた児童福祉のすべてを失うことになった。

 その後は、寮のある仕事に就くなど、住まいと収入を同時に確保できる状況にあれば、とりあえず生きてはいける。しかし、病気や負傷などのアクシデントで仕事を失えば、住まいと収入を同時に失い、路上などでの「サバイバル」を余儀なくされる。

1対1の「ごはん」から始まる
ボランティアたちの伴走支援

 坪井さんは、2009年、高等学校卒業程度認定試験(高認)合格を目指すための無料の塾を開設した。先生たちはボランティアだ。当初の対象は、中学校卒業後の15歳~39歳の人々、生活保護世帯の子および親、ひとり親世帯の子および親、その他、経済的に厳しい状況にある人々であった。しかし、高認に合格しても最終学歴は中卒のままなので、本人の社会的状況が変わるわけではない。「食える仕事」に就き、経済的な安定を獲得するところまでは、伴走が必要だ。

 また、高認合格までの生活費、その後の進学したい学校の受験料や学費などは、すべてユースたちが賄う必要がある。そもそも、高認合格や進学を目標にするには厳しすぎる現状に置かれているユースの方が圧倒的に多い。そういうユースたちは、心の居場所がなく、学習支援以外の多岐にわたるサポートや居場所を必要としている。

 しかし、出会いの機会が「勉強」「高認」では出会いにくいし、出会っても関係を継続しにくい。そこで坪井さんは、「ごはん」という別の入り口をつくることを考えた。また2012年からは、対象を15~25歳程度に絞った。