海外勤務を希望する学生は
日常的に異文化体験をしている

 では、「海外で働きたい」と答えた学生とそうでない学生との違いはどこにあるのでしょうか。

 先ほどの大学生調査の結果によると、日常的に、留学生や外国人教員とのコンタクトがあるかどうかが、重要であることがわかりました。

 たとえて言うのなら、「半径3メートルの日常的な異文化体験」が鍵となっている ということです。半径3メートル、というのは、要するに授業、サークル、研究室、バイト先など、大学生が過ごしている半径3メートル以内の身近な人、その中で外国人との接触があるかないか、ということのようなのです。

 それを確認する手段の一つが、スマホです。スマホの中には、携帯電話の連絡先、LINEの連絡先、Facebookのお友達、などにその人が持つ「ソーシャルネットワーク」が可視化されています。

 その中に、外国人の名前もある人、つまり、日常的に異文化体験ができそうな場に出かけていたりして、外国人の友人知人との交流がある人は、「海外で働きたい」という気持ちを持つ人が多い、ということになろうかと思います。

 ですので、これからは大学側も、単に短期留学プログラムを提供するだけでなく、海外勤務への動機づけができるよう、大学生が異文化を身近に感じたり、日常的に外国人との交流が持てるような環境づくりに配慮することも必要だということになりそうです。

 そして、「グローバル人材」を育成したい企業は、「海外で働きたい、機会があれば海外に行ってみたい、海外でチャレンジしてみたい」といった「動機」を持った人材をいかにして採用するか、というところが第一ステップになると言えそうです。

(東京大学大学総合教育研究センター准教授 中原 淳、構成/井上佐保子)