
トランプは銅に50%関税の意向
今後も継続するかは不透明
トランプ政権が発足してから、これまでの常識を覆すようなかなり無理な政策が採択されており世界中が混乱している。代表的な政策は、各国に課している国毎の一律関税と、自動車や鉄鋼、アルミ製品、銅などに対する関税の2つだ。
前者は、(好意的に考えて)中国から迂回輸出を行っている国をあぶり出し、中国を封じ込める戦略だ。そして後者は、安全保障の観点から重要資源の国内生産を増やす戦略だ。しかし後者については、来年の中間選挙を意識した自国産業保護が目的とも考えられる。
トランプ大統領は7月8日、銅に対して8月から50%の関税を掛けると発言した。これは正式決定ではないものの、その後、ラトニック商務長官がこれを裏打ちするような発言をしているので、このままであれば8月1日から銅には50%の関税が掛かることになる。
銅は主に電線として幅広く工業品に用いられており、米国内でも設置が加速するデータセンター向けの需要増加が見込まれる戦略資源の1つである。しかし、こうした一連の関税は米国の消費者負担に直結するため、50%の税率がこのまま維持されるとは考え難い。
自国での鉱山生産の比率を増加させたいのであれば、オバマ政権時代に環境保護を理由に開発を止めていた鉱山開発を認可することや、自国内での銅鉱石生産に補助金を出す、同盟国内でのサプライチェーンを強化するといった政策の方が効果があると考えられる。
鉱山生産は1年2年で完了せず、長い場合は10年以上かかることがある。このため今回の決定が今後も継続するかどうかは、トランプ大統領の意思を次ぐ後継者が次期大統領選に勝利することが必要条件となる。
米国と中国の直接的な資源を巡る対立としてレアアースが取り上げられて久しい。先端部品の性能向上に寄与するレアアースも重要資源の1つであるが、中国のシェアが大きい。米政府は今般、カリフォルニア州にマウンテン・パス(Mountain Pass)鉱山を有し、レアアースを採掘するMPマテリアルズに出資し、筆頭株主となる見込みだ。これも必須資源の内製化を強める動きの一環である。