「グローバル人材」と聞くと、多くの人が「英語ができる人」を思い浮かべるのではないだろうか。しかし、大企業を中心に能力開発を行っている藤田聰氏によれば「英語は二の次」だという。詳細を聞いた。
過剰なグローバル化要求に
悩む前に知っておきたいこと
「セクハラ」「モラハラ」など、近年ではむやみやたらに「ハラスメント」という言葉が使われているように見える。最近私が耳にするのは「グローバルハラスメント」略して「グロハラ」。これは「グローバル人材でなければ人材に値しない」というような、いき過ぎたグローバル化要求のことを指す。
なんと無茶なのだろう。大企業の人事部で聞くことがあるが、こんな要求をする人自身がはたして「グローバル人材」なのかどうかはかなり怪しいところだ。具体的にはTOEICの点数が目標として使われる。最近の新卒社員は語学レベルが高いので、ひょっとしたらベテラン社員による語学コンプレックスのこじらせが原因なのかもしれない。
とはいえ、グローバル人材が求められているも事実だ。この言葉は、2010年ごろからよく使われるようになった。文部科学省と経済産業省が共同で事務局を務める「産学人材育成パートナーシップグローバル人材育成委員会」が発足したのがひとつのきっかけだろう。この委員会が出した『報告書~産学官でグローバル人材の育成を~』(2010年4月)では、以下のように定義をしている。
グローバル化が進展している世界の中で、主体的に物事を考え、多様なバックグラウンドをもつ同僚、取引先、顧客等に自分の考えを分かりやすく伝え、文化的・歴史的なバックグラウンドに由来する価値観や特性の差異を乗り越えて、相手の立場に立って互いを理解し、更にはそうした差異からそれぞれの強みを引き出して活用し、相乗効果を生み出して、新しい価値を生み出すことができる人材(50ページ)
この定義には決定的に足りない要素がある。それは「べらぼうに仕事ができること」だ。
世界で活躍している人を思い浮かべてほしい。現役メジャーリーガーのイチロー選手、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授、世界的な指揮者である小澤征爾氏などを見れば一目瞭然。グローバル人材の共通点は、専門分野を極めていることだ。英会話に力を入れるのは二の次、三の次である。
将来グローバルに打って出たいと思う人は、まず腰を据えて自分の専門分野を見つけ、実績を出すことから始めよう。「この分野といえばあいつ」と社内外で名前が出るようになってから、キャリアプランと合わせてどのマーケットで生きるのかを判断すればよい。