グリコは、ポッキーの形状のアイデアについては特許を出願していない。その代わりに、発売時に「実用新案」を取得している。

 実用新案とは「物品の形状、構造又は組み合わせに係る考案」であり、有効期限は10年間。その間は同じ形状のお菓子を他社は販売できなかったが、10年たって権利が切れたあとも、しばらくは類似商品は発売されなかった。他社が似たような商品を出したのは、ポッキー発売から実に17年後のことだったそうだ。

 これは、グリコがクローズにしている秘密の技術を、他社が独自に開発するのにそれだけの時間が必要だったということではないか。

 もしグリコがポッキーの製法で特許申請をしていたら、その内容が1年半で公開されるところだった。仮に特許が取得されたとしても、他社が権利を侵害しない範囲で真似をするのは十分可能なので、もっと早く類似商品が世に出回った可能性がある。

 実用新案は形状に対するものなので、類似商品が出回れば盗用であることを簡単に証明できる。したがって、訴えれば勝てる可能性が高い。特許ではなく、形状に関する実用新案でアイデアを守るという判断は、戦略的に正しかったといえよう。

 こうした例からもわかるように、いまや知財保護といえばすぐに特許取得を考えるのではなく、多様な選択肢の中から戦略的に方法を選ぶべき時代なのだろう。

(文/情報工場シニアエディター 浅羽登志也)

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◆訂正:本文中、ポッキーに関する実用新案の有効期限の数字に誤りがありましたので訂正し、また内容に関して一部著者意図が伝わりにくい表現がありましたので訂正致しました。(2017年1月26日)