「グリーン・イノベーション」が大流行で、「低炭素社会」という言葉が入った講演会は盛況である。大きなビジネスチャンスとして、産業界の関心も高いようである。今回はグリーン・イノベーションを促進する際のいくつかの課題について検討する。
技術の採否を決めるのは経済
我が国には環境・エネルギー分野の優れた技術があり、それらを開発する能力も非常に高い。とはいえ、開発された技術は利用されなければ意味がない。そして、技術の採否を決めるのは、市場であり、企業である。
なぜ、中国の農業で機械化が進まないのか? 農業機械は貿易できるから、中国での価格は米国と大差はないが、中国では賃金が安いために、労働集約的な方法の方がコストが安い。だから、機械が採用されないのである。このように、優れた技術でも、経済状況によっては採択されないことがある。
ロードマップの必要性
我が国の2008年におけるCO2排出量は約11.4億トンで、その内訳は発電などのエネルギー部門が4.1億トン、運輸が2.3億トン、民生が1.6億トン、産業が3.4億トンとなっている。政府は、2030年までに、30%強削減して、7.4億トンにしようと考えているようである。
低炭素社会への移行は、ビジネスのやり方を変える可能性があると同時に、ビジネスチャンスでもある。しかしながら多くの企業は、低炭素社会の構築を目指した明確な行動計画を、描き切れないでいる。その理由の1つは、低炭素社会を実現するために、国や地方公共団体がどのように取り組むのかが明確になっておらず、全体像が見えていないことにある。
低炭素社会という大きな目標を掲げるのは政治の役割であるが、それを達成するための道筋を示すのも、また政府の仕事である。その際には、技術開発のロードマップのみではなく、どのような条件の下で、いつ、その技術が採用されるのかを示す必要がある。