ある日、気がついたら銀行口座の預金残高が勝手に何十万円も増えている――。マイナス金利の現在ではあり得ない出来事だが、今年の確定申告ではこんなマンション購入世帯がたくさん出そうだ。それはなぜか?

 Aさん夫妻はマイナス金利で30万円、口座残高が増えた。今年は、こんなマンション購入世帯が確定申告でたくさん生まれる元年になりそうだ。マイナス金利下では、預金をしても利息はスズメの涙ほどにしかならない。しかし、マイナス金利と持ち家優遇税制を組み合わせると、キャッシュが生まれてしまう。実は、この制度は10年間適用され続けるので、購入時に300万円のキャッシュ増加が確定することも夢ではない。

金利よりも税還付の方が大きい?
持ち家の常識はこう変わった

 持ち家取得における住宅ローン控除は、10年間で最大400万円(=40万円×10年)の税還付を受けられる(認定住宅の場合、500万円)。これに対して、マイナス金利の影響で10年間に支払う金利は400万円を下回るケースが増えてきた。おおまかに計算すると、4000万円の借入れの場合、1%の金利ならば40万円の年間金利総額なので、金利が1%を割り込むと40万円の還付金を下回ることになる。

 こうした状況下で、たとえば金利が30万円に対して税還付が40万円になると、住宅ローンを借りて10万円キャッシュを増やしたことになる。つまるところ、この制度は金利が1%を大きく割り込むことを想定していなかったのだろうと想定される。こうして、個人が住宅ローンを低金利で借りた分だけマイナス金利の恩恵を受けられるようなことが起こる。

 実例はこうだ。5500万円を0.5%の金利で35年ローンで借りると、当初10年の金利は240万円ほどになる。400万円の税還付を受けると、プラス160万円のキャッシュが生まれる。つまり、これは160(キャッシュ増)÷5500(借入額)=0.3%のマイナス金利に相当する。これを所得がある夫婦2人で行うと、160万円×2人=320万円のキャッシュが生まれることになる。それも10年間固定金利であれば、10年間のキャッシュフローは購入時点で確定することになる。