その指摘は本当だろうか?
先に紹介したムハマド・ユヌスさんの話をしましょう。
彼はバングラデシュの貧困層にお金を貸す「グラミン銀行」をつくりました。これは、貧しい人たちに無担保でお金を貸し出すことで、貧困から抜け出させるためのシステムです。
ユヌスさんがこの発想を思いついたとき、多くの専門家は貧困者への偏見のため、「みんなお金を借りたら、とっとと逃げてしまうだろう」と指摘しました。
でも、「その意見はもっともに聞こえるけれど、だれか本当に試した人などいるのだろうか?」と問えば、確証などはまったくなかったわけです。
そこで彼は実験をしてみました。実際に小規模のシステムをつくり、面接をして融資する人も慎重に選ぶようにする。それで、お金を借りた人がそのまま逃げてしまうかどうか、検証してみたのです。5人でグループをつくってもらい、一人ずつ順番に貸し出すことにました。一人が返さなければ、次の人が借りられないシステムです。
すると「今の貧しい生活を抜け出したい」と融資を受ける人の多くは、困難にめげず、一生懸命真面目に働き、借りたお金を返そうと努力することがわかったのです。
実際、グラミン銀行の返済率を調べると、一般の投資銀行よりも高い九十数パーセントという数値だったそうです。
人は「その行動を続けることで、自分の心からの望みが実現する」と思えば、考え方を変え、意欲的に取り組むようにもなるのです。
それは、自分の行動に確実感が生まれるからです。行動できない人は、単に自分の本当の思いがわかっていないだけなのです。
一般社団法人コーチングカレッジ 代表理事
1971年生まれ。立教大学卒業後、「文化の異なる人々の架け橋になりたい」と伊藤忠商事に入社。10年間、不動産事業、貿易事業、海外植林事業、コンビニエンスストア事業に関わる。2004年、伊藤忠商事を退職しイベント企画運営会社を設立。心理学とビジネスに関するセミナーを年間200回以上主催。石原明氏、棚田克彦氏、マイケル・ボルダック氏などの講座をプロモートする。無名講師をプロデュースして、短期間でトップ講演家・トップコーチ・30万部ベストセラー作家・年収9000万円にするなどの手腕には定評がある。
スピードチェンジ・ジャパン株式会社にて800人の認定コーチを輩出し、一般社団法人コーチングカレッジにて600人の卒業生を育成。セルフプロモートにより自身も人気コーチとなり一時は申込が9ヵ月待ちに。
分かりやすいセミナーと親しみやすい人柄で、経営者から会社員、主婦、学生まで幅広く人気がある。2015年9月に悪性リンパ腫を宣告されたが、約半年間抗ガン剤治療に専念し、2016年春に寛解。ガンを「ギフトだった」と言い、さらなる幸せと発展に生かしたコーチング技術は、逆境にある人たちを励ましている。
訳書に『目標達成する技術』『人を動かす技術』等(累計30万部)がある。
※本連載は、今回で終了します。